どうも!ブランドクリエイターの中江です。
今日はアパレルブランド・ファクトリエ創業者の山田敏夫さんが書かれた『ものがたりのあるものづくり ファクトリエが起こす「服」革命』という書籍を紹介します。
このファクトリエというアパレルブランドはご存知でしょうか?
創業は2012年なので、まだまだ創設されて日が浅いアパレルブランドなのですが、理念、ブランドコンセプト、ストーリー、商品、WEBサイトなど、様々な観点から非常にブランド力があり、それこそガイアの夜明けやカンブリア宮殿でも取り上げられたりもしていて、多くの話題を集めている、アパレルブランドです
1.ファクトリエについて
アパレルブランドというのは、今、非常に差別化が難しい業界の一つだと思います。
というのも、街中を見回しても、ネットを見回しても、
安くて、ファッション性があり、高品質
を謳うアパレルブランドは山のようにあるからです
そして日本人の多くは、衣服に求めるものは「ファッション性」と「経済性」であり、今から新しいアパレルブランドを立ち上げたとしても、上手く立ち行かないというところがほとんどだと思います
そんな中、ファクトリエは、創業4年で売上10億に到達し、コロナ禍でも売上を更新していっています。
今、日本のアパレル・繊維産業というのは非常に危機的な状況にあります。
日本を近代国家に押し上げた背景には、日本人特有の器用さによって生まれた、質の高い生糸や織物技術があるという風に言われています。
昭和初期までは、日常的に、普段着を機織り機で自作したり、お店で仕立てしたりするのが当たり前でしたが、戦後になり、高度経済成長を迎えると状況が一変します。
高度経済成長によってもたらされたのは、大量生産・大量消費の流れであり、繊維業界もその流れに飲み込まれ、職人の手仕事よりも、機械による効率化が重視されるようになっていきました。
1980年代には、国内アパレルメーカーによって、独自ブランドが数々生まれていきましたが、基本的には
いかに安く大量に服を作ることができるのか?
が重視されていたため、生産は国内ではなく、海外の工場へとどんどん移ります。
仮に国内の工場に発注があったとしても、価格の決定権はメーカーにあるので、無理難題の要求をされても、ただその要求を飲み続けるしかなく、段々と疲弊していき、技術力のある国内の職人や工場がどんどん消えていったというわけです。
具体的にいうと、1990年には約50%あった国内アパレル品の国産比率は、2017年にはたったの2%まで減少してしまいました。
もはや「メイド・イン・ジャパン」の服作りというのは、風前の灯のような状況になってしまいました。
こんな国内の危機的な状況に対して、一石を投じ、状況を大きく変えていっているのが、ファクトリエというブランドです。
ファクトリエというブランド名は「ファクトリー(工場)」と「アトリエ(集団)」が組み合わさってできています。
このファクトリーは、国内で日本を代表するような職人技術を抱えている工場のことで、ここに所属する職人たちとともに、職人の技術と情熱が結集された、メイドインジャパンの衣服を作っているのがファクトリエです。
2020年9月時点で、55の工場と提携して、国産の衣服を作っています。
ファクトリエは、従来のアパレルブランドとは、何から何まで違います。
まず、基本的には、衣服を販売している店舗は持たず、東京、名古屋、熊本、台湾に、試着だけができるフィッティングスペースだけを持っており、販売は全てECサイト経由です。
まさに「工場直販」という新たな形ですね。
しかも、その工場は、基本的には、高級ブランドの衣服を普段から作っているような工場なので、非常に質が高い衣服を作ることができます。
更に、工場選びに関していうと、代表の山田さんが厳格な基準を設けて、「独自技術を持つ」ところと提携します。
例えば、「汚れを弾くコットンパンツ」という商品があります。
画像出典:https://factelier.com/
このパンツは、半永久的に落ちない、撥水効果が施されたコットンパンツで、コーヒーをこぼしても、葡萄ジュースをこぼしても、全て水分を弾いてしまって、汚れが全然つかないという日本初のパンツなのです。
撥水効果は、フライパンを作るときに使われるテフロン加工を応用しており、岡山県児島にある工場と1年かけて、開発した商品です。
この「パンツを作ってからテフロンTM加工を施す」という製法は、他のどこにもやっていないので、商品としての付加価値が非常に高いのです。
こういった独自技術を持った、工場と提携をして、商品を開発していくので、単純に着心地が良いという以上のユニーク性を持った商品ばかりが生まれているので、そのことが更に、ファクトリエというブランド力を高めています。
そして、極めつけは、店舗を持たずに、EC決済なので、流通させるための中間費用がかかっておらず、価格もハイブランドと比べると、リーズナブルに提供できるというわけです。
質が高く、これまでにない衣服なので、一度着ると、ファンになってしまうという人が続出しているという訳です。
そして、さらにファクトリエが面白いのは、「物語」という背景とセットで、商品を販売しているということです。
詳しくはぜひ「ファクトリエ」と検索してもらって、ECサイトを覗いてもらいたいのですが、各商品ページには、写真や製品情報や特徴だけでなく、ストーリーが掲載されています。
- どんな工場の職人さんと作ったのか?
- どんな工場なのか?どんな技術を使っているのか?
- どんなこだわりがあるのか?
- 製品を作るのにどんな苦労があったのか?
- どんな思いを込めているのか?
などをインタビュー動画と共に掲載しています。
この背景とセットで売るという感覚は非常に重要です。
というのも、どんな素材を使っているか、どんなスペックがあるのか、どんなデザインなのかという表面的なことは、後追いで、競合他社から真似される可能性がありますが、
どんな人が作ったのか?
というような背景は、後から真似できないからです。
背景を伝えて売ると、愛着や共感という感情的価値が付加されるので、単純に商品価値は更に高まります。
そして、これからの時代、消費者はますます、この「背景」を踏まえて買うということが増えてくると思います。
というのも、どんな業種業界も成熟化していくと、価格と商品スペックでは差が付きにくくなるので、背景で差別化するということが、現に今起きてるからです。
これは以前の『プロセスエコノミー』の記事でもお話したことです。
この商品はどんな人が作ったのか?どんな思いを持って作ったのか?どんなプロセスを経て作られたのか?
こういったことは、昔は、伝える手段も限られていましたし、情報を知る手段も限られていましたが、インターネットの普及によって、そういった背景情報の伝達も収集も容易になりました。
背景をオープンに表現すればするほど、市場価値は上がっていくので、これからも背景を開示していくブランドは増えていくと思います。
そうなってくると、目立ってくるのは、背景を隠しているブランドです。
特に、ファストファッションを中心としたアパレル業界は「どんな風に衣服が作られているのか?」という背景は隠されがちで、そこには環境問題や労働問題、人権問題など深刻な課題をたくさん抱えているからです。
例えば、環境問題の観点から言うと、Tシャツ1枚を作るのに2720ℓの水が必要ですし、ジーンズ1本の綿を生産するには1万ℓ以上が必要だと言われています。
他にも、コットンの原料の綿花は、とても虫の付きやすい植物で、殺虫剤が散布される訳ですが、インドなどの世界的な綿花栽培の地域では、この殺虫剤由来で、毎年数万人が死亡し、入院者数は100万人を超えるそうです。
他にも、2013年には、バングラデッシュにある、ファストファッションを製造する8階建ての工場が崩壊して、死者1000人以上、負傷者2500人以上という凄惨な事故が起きました。
なぜ、この工場が崩壊したのかというと、経費を削減するために、違法建築を繰り返していたからです。
そして、この工場にはコスト削減のために、10代の子どもたちも多く働かされていたといいます。
こういったニュースは今やインターネットがあるので、世界中に駆け巡ります。
背景というのは、隠してもすぐバレるという時代が到来しているので、ファクトリエのようにいかに、誠実に、関わる人を幸せにしていくのかという想いが重要になってくると思います。
ファクトリエがすごいのは、従来のアパレルブランドのように、工場をメーカーの言いなりにするという関係性ではなく、リスペクトし、工場もより繁栄・発展するような仕組みを考えていることです。
その象徴的な取り組みが、ECサイトで販売する商品価格の決定権を工場に委ね、工場の取り分を5割で折半しているということです。
普通、これまでは、工場の取り分というのは、2~3割が普通で、商品価格もメーカが勝手に決めるので、工場としてはかなり苦しい状況に強いられていました。
それが取り分が5割までアップして、商品価格も工場で決められるとなれば、売れれば売れるほど、経営的にも楽になり、工場の職人にも還元されていきます。
そういう循環の仕組みを作ったので、工場の職人は、技術の出し惜しみをせずに、
もっとお客様に喜んでいただくにはどうすればいいのか?
という改良を繰り返すので、商品力が自然と上がっていきます。
こういう背景を共有されると、顧客は単純に「商品のスペックが良いから買ってる」というよりも、「このブランドを応援したいから買っている」という風にも変わってきます。
だって、このファクトリエで服を買うことで、日本の伝統的な繊維産業を守ることになり、日本が誇るアパレルブランドを応援することになるので。
ファクトリエが、アパレル業界で起こしたことはまさに異例であり、革命です。
断言できますが、こういった革命は、いくら競合を分析しても絶対に思いつきません。
自分をどうしようもなく突き動かすような情熱が必要になってきます。
これが背景にあるブランドは、本当に強いです。
2.ファクトリエのブランド力の源泉
では、なぜ、山口さんは、このファクトリエという革命的なブランドを生み出すことができたのか?
山口さんは、熊本県のとある商店街のある100年以上続く洋品店に生まれました。
実家の洋品店では、日本製の仕立てのいい服ばかりが販売されており、どれだけ近所にファストファッションのお店ができても、そのスタイルは崩しませんでした。
山口さんは、さぞかし子ども時代から優秀な人だったんだろうなと思うかもしれませんが、書籍によると、そんなことは全くなかったそうで、10代は劣等感の塊のような存在だったそうです。
まず、記憶力が人一倍悪く、勉強が全くできません。あまりにも勉強ができなさすぎて、学習塾に入ろうとしても、入塾を断られるほどだったそうです。
また、スポーツもからきしダメで、様々なものに取り組むものの全く上達しません。例えば、水泳なんかは4才から習っていましたが、中学生になっても、飛び込みすらできなかったそうです。
他にも高校時代に始めた陸上の長距離走では、他の選手に2周もの周回遅れをつけられ、あまりにも遅くて、大会の運営に支障が出るので、ゴールを運営テントに変えられたこともあるそうです。
ロクな人生を送れないんだろうな
と思っていた、山口さんの転機となったのが、大学時代のフランス・パリへの交換留学でした。
これもファッションを学ぶために行ったのではなく、なんとなく「将来の役に立つかな」という理由で、英語圏の国は競争率が激しそうだったので、消去法でフランスを選んだだけです
そして、パリに着くと、いきなり様々なトラブルに巻き込まれます。
まず、地下鉄の中でスリに遭い、いきなり一文なしになった上に、親知らずがいきなり痛みだし、言語が通じないパリで保険が効かない抜歯するハメになり、さらに滞在先で泥棒にも入られ、一気にお金が底をつきました。
もうアルバイトをしないと生きていけない訳ですが、当然、フランス語も話せません。
そこで大学で出会ったフランス人の友人に泣きつき、履歴書を書いてもらって、20社に送り、面接の承諾が返ってきたのは1社だけでした
実は、この1社が、世界的なブランドのグッチであり、ここでの体験が、ファクトリエを生み出すきっかけとなります。
なんとか面接をパスはしましたが、フランス語は話せないので、まずは在庫置き場でひたすら商品のタグを貼るという単純作業をします。
そして、2ヶ月後にラッピング係となり、その後は、日本人観光客を相手に免税手続きの案内をする仕事、最終的には店頭で接客を任されるようになります。
そこで、やっとグッチというお店を見渡せる余裕が生まれ、そこで初めて、グッチのものづくりに対する誇りを感じることになります。
グッチに並ぶ全ての商品は、自分たちの工房から生まれた自信作であり、どこの誰が作ったのかわからない服ではなく、自分たちが一から責任を持って携わった商品だけを並べます。
また、グッチだけでなく、ルイヴィトンやエルメスなどのヨーロッパを代表するブランドは工房から生まれており、その工房での研修も頻繁に企画され、商品の売り手が、ものづくりの物語を伝えているという場面を何度も目の当たりにします。
日本では服を選ぶ基準として「ファッション性」と「経済性」ばかりが重要視されますが、フランスでは
どこの誰が作ったものなのか?
がとても重視されます。
例えば、エルメスでは、自社専属の職人の一人一人に、シリアルナンバーが与えられ、それが商品に刻印されており、「誰が作ったものなのか」が明白な仕組みが採用されているのです。
日本では「その服はどこで作られたものですか?」と質問を投げかけても、すぐに答えられる人はほぼいないですが、ヨーロッパでは「これはイタリアの工房で作られてね…」というような会話がよくされます。
作り手に関心がない、日本とは真逆です。
山口さんは、同僚に
日本では値段やブランドには関心があっても、どこの誰が作っているのかを気にする人は少ない
と伝えると、
日本にはあれほど素晴らしい織りや染め文化があるのに、どうして作り手を大事にしないんだ?
と言われました。
日本の伝統技術は、世界から高い評価を受けている訳ですが、構造的に「作り手」を大切にしてこなかったことによって、日本のアパレル・繊維産業は衰退していったのだと思います。
日本の工場は、ハイブランドのメーカーと守秘義務契約を結ぶので、エルメスのように、「どの職人が作ったのか?」「どの工場が作ったのか?」を後から追えるような仕組みもありませんしね。
そんな海外の価値観に触れて、山口さんは
いつか自分も、日本の素晴らしいものづくりを立て直したい。日本のものづくりから、一流の世界ブランドを作ってみせる
という決意をして、今のファクトリエが誕生したのです。
この続きのストーリーはぜひ、『ものがたりのあるものづくり ファクトリエが起こす「服」革命』を読んでいただきたいのですが、一つ言えることは、この体験を通じて、山口さんは「誰になんと言われようと、どうしようもなく突き動かされる情熱」を得たんだと思います。
競合分析をしたからファクトリエは生まれたのではなくて、これまでの人生を通じて、体感覚として切実に、ファクトリエのような企業が必要だと思ったからこそ、ブランドは生まれたんだということです
ブランドに必要なのは「なぜ、このブランドを始めたのか?」を聞かれた時に、自分の人生ストーリーに基づいて、明確に答えられることです。
そういう芯の通ったブランドには、多くの人が共感し、ファンが付くブランドとなっていきます
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