どうも!ブランドクリエイターの中江です。
今日は「ブランディングにおける最重要ポイント」というテーマでお話していきたいと思います。
ブランディングとは、その市場において、圧倒的な希少価値と付加価値を持つポジションを築く手法です。
ブランディングを実践していけば、どれだけその市場がレッドオーシャンであっても、相場よりも高い価格で販売していても、安定的に集客ができるようになります。
これまでの記事で、ブランディングについて、さまざまな角度でお伝えしてきましたが
ブランディングを実践する上で、このポイントを外してしまったら、どれだけお金を尽くしても、どんな手法を尽くしても、ブランドは作れない
という最重要ポイントを今日は解説していきたいと思います。
1.ブランドポリシーとは何か
では、ブランディングにおける最重要ポイントとは何か?
それは、「ブランドポリシーを貫くこと」ということです。
ブランドポリシーとは、ブランドの理想を実現するために、美学として絶対に守る信条のことです。
例えば、北九州市に、「シャボン玉石けん株式会社」という企業があります。
画像出典:https://www.shabon.com/
名前を聞いたことがあるという人は多いと思いますが、「シャボン玉石けん」は、従業員数144名、年間売上高73億円の、国内の無添加石鹸のトップブランドです。
創業は1910年なので、100年以上の歴史を持つ老舗企業でもあります。
国内の一般的な固形石鹸は1個数十円のものが平均相場ですが、シャボン玉石けんの価格は130円と言う相場よりも高い価格設定がされているにもかかわらず、全国的に非常に多くのファンを抱えているブランドです。
まず、シャボン玉石けんの理想(ブランドプロミス)は
健康な体ときれいな水を守る
ことです。
その思想の元に、石鹸が作られているので、非常に手間暇がかかっています。
まず、原材料調達の段階から、酸化防止剤や防腐剤を使いません。
そして、10年以上の経験を持つ職人が、7日間から10日間かけて窯で炊き込む「ケン化法」という製法で作ります。
この無添加石鹸の対極的な位置にあるのが「合成洗剤」です。
まず、その作られ方から両者は違います。
無添加石鹸は、牛脂・パーム油・米ぬか油といった天然油脂や脂肪酸から作られる一方で、合成洗剤は、石油から作られます。
合成洗剤は石油由来であるが故に、人体の健康にも影響があるのと、環境破壊にも繋がることが指摘されています。
洗剤や石鹸で汚れが落ちるのは、汚れを浮かす界面活性剤があるからですが、石油由来の合成界面活性剤は、水ですすいでも、全てが落ちることはなく、衣服に付着して、残ったりします。
そして、その付着した合成界面活性剤は、汗と共に、溶け出して、その毒素が、皮膚から吸収され、血液へと流れ、体全体へと巡ることが指摘されています。
また、最終的には、生活排水として環境へと流れるわけですが、合成洗剤は微生物へと分解されるまでに非常に時間がかかることから環境への影響も指摘されていると言うわけです。
その一方で、合成洗剤は、石油から製造でき、大量生産が可能で、価格は安くて済むので、第二次大戦後に、日本に普及していきました。
実は、昔、シャボン玉石けんの主力商品は、無添加石鹸ではなく、合成洗剤でした。
ですが、合成洗剤が「体に悪い」とわかったタイミングで、180度経営方針を転換させたのです。
3代目の森田光徳さんは、長年、湿疹に悩まされており、どんな治療法を試しても、直りませんでした。
そんな時に、国鉄から依頼を受けて作成した、純度96%の無添加石鹸を自分の体に使ってみたところ、湿疹が嘘のように消え、合成洗剤を使うと、再び湿疹が出てくることを経験しました。
その時のシャボン玉石けんの主力商品は、合成洗剤だったわけですが、これこそが長年、自分を苦しめてきた原因だと知った時に、愕然とし、光徳さんは、今後の経営方針に悩みます。
「体に悪いとわかっている商品を世間に売りたくない」という気持ちと、「合成洗剤を売らなければ会社が続かなくなる」という売上を上げる必要性の間に板挟みになったという訳ですね。
何か事業を始めると、こういう「本心」と「売上」の板挟みになり、選択に迫られるという場面に出くわすと思います。
ここでまず重要なのは、両方大切だということです。
一番多いのは「本心」を蔑ろにして、「売上」を選ぶということですが、これでは長期的に事業を繁栄させていくことはできません。
というのも、「本心」を蔑ろにして、「売上」を選ぶということは、今後の事業設計の全てが、お客様よりも、自社を最優先することになるからです
当たり前ですが、
お客様よりも自社の売上の方が大切です
と宣言している企業にファンは付きません。
固定客がつかないので、売上は安定せず、事業は成長していかなくなります。
また、「売れれば何でも良い」という思想に会社全体が染まっていくので、「今、売れている傾向にあって、他社よりもコストパフォーマンスが高い商品だけ」を作るようになっていくので、思想性も一貫性もない、どこにでもあるようなありふれた商品しか作れなくなっていき、結果として、価格競争に巻き込まれていきます。
また、「本心」を蔑ろにして、「売上」を選ぶという行為は、「本心」と「行動」が一致しないことになるので、事業に対する経営者の熱量も冷めていき、それが経営全体に悪影響を与えていきます。
ただし、「本心」を最優先にして、「売上」を諦めれば良いという話でもありません。
当然ですが、「売上」が上がらなければ、会社は潰れてしまうからです。
本心に基づき、事業をしながら、しっかりと売上を作ることが大切です。
順番としては、まずは「本心」ありきです。
どんな業種業界であっても、自分の「本心」に真正面に向き合って、事業をしている企業は、本当に稀です。
大抵の企業は「売上」しか追っておらず、不都合な現実には目を背けます
でも、「稀」な存在だからこそ、その市場で、希少価値が高いブランドを作ることができるのです。
なぜ、シャボン玉石けんが、今なお繁栄を続けているのか?
安い合成洗剤が主流を占める中で、「無添加石鹸ならシャボン玉石けん」という独自のポジションを築けたからです
独自のポジションは、売上よりも大切にする、ブランドポリシーを貫かないと築けません。
もし、シャボン玉石けんが、今もなお、合成洗剤を扱っていたら、「無添加石鹸ならシャボン玉石けん」というポジションは築けていなかったでしょう。
「本心」と向き合った結果、シャボン玉石けんのように180°経営方針を転換すると、必ず、顧客・従業員・取引先から反発が来るでしょう。
関係性が切れてしまうところも出てくるかもしれません。
シャボン玉石けんも、経営方針を180°転換させた時、100人いた社員は5人まで減り、一時は月商も100分の1にまで下がりました。
ですが、それはシャボン玉石けんにとっては必要なことでした。
シャボン玉石けんの理念に共感できない人が離れていっただけなので。
ですが、そこから、愛用者からのお礼状や激励の手紙がたくさん寄せられるようになったそうです。
シャボン玉石けんを使って、光徳さんのように、健康状態を回復した人が大勢出てきたからでしょう。
「本心」に真正面に向き合えば、多くの人をファンにする、高い商品力を持つ「商品・サービス」は作成できます。
そして、次に重要なのは、その価値を伝えて、広めていくことです。
どれだけ高い商品力を持つ商品・サービスを作ったとしても、「その価値が伝わらない」「そもそもその商品・サービスの存在を知らない」では誰も買ってくれないので、売上は上がりません。
シャボン玉石けんの業績が好転したのも、シャボン玉石けんの価値が伝わり、多くの人に知ってもらったきっかけがあったからでした。
それが、1991年に光徳さんが執筆した『自然流「せっけん」読本』です。
石けんと合成洗剤の違い、石けんの安全性や環境に対する優しさなどをわかりやすく解説したこの本は、10万部のベストセラーになり、「シャボン玉石けん」という存在が多くの人に認知されるきっかけとなりました。
存在が認知されれば、商品が売れ、ファンが生まれ、リピートされ、口コミされ、事業が安定的に成長するようになるというループに入るようになります。
2.ブランドポリシーの作り方
だからこそ、改めて、売上よりも、優先するべき、「ブランドポリシーとは何か?」を考えた方が良いということですね。
ブランドポリシーを作成する際のポイントはまずは「究極の○○とは何か?」という理想から発想することです
カフェを経営するなら「究極のカフェとは?」「究極のコーヒーとは?」を考える。
組織開発コンサルティングをしているなら「究極の組織とは?」を考える
石鹸を販売するなら「究極の石鹸とは?」を考える。
これが本心であり、ブランドの理想を洗い出すための作業となります
その上で、究極の○○を実現するために、絶対に守るべきことを言語化して、例えば
お客さまの健康を害すると分かっている商品を売ってはならない
というふうに箇条書きで、書き出すと、それがブランドポリシーになります。
このブランドポリシーを言語化して、組織内の従業員にも共有すると、組織全体として見ても、行動の一貫性が出てくるので、ぜひ、今回の記事をきっかけに作成に取り組んでみてください。
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