どうも!ブランドクリエイターの中江です。
「経営理念って何?重要なの?」「具体的にどうやって作ればいいの?」という人は意外と多いんじゃないでしょうか?
経営理念は、ビジネスをやるにあたって、非常に重要になってきます。
はっきり言って、この経営理念がちゃんとしたものでなければ、どれだけ商品力があっても、スキルがあっても、集客力があっても、優秀な人材を確保する手段がいても、会社は潰れます。
それくらい会社経営において基本となるものが経営理念なのです。
この経営理念について理解しているかどうかで、長く繁栄できるかどうかが決まると言っても過言ではありません。
なので、今回は、
- 経営理念とは何か
- 経営理念の作り方
- 経営理念の事例
というテーマでお話ししていきたいと思います。
では、早速、始めていきましょう!
Contents
1.経営理念とは何か
まずは、具体的な事例や作り方に入る前に、経営理念とは何かというテーマでお話していきたいと思います。
1-1.経営理念とは
まずは、経営理念の定義について。
経営理念を、一言で表現するなら、
この会社は、何のために存在するのか?
という問いに対する答えのことです。
言い換えるなら、その会社の旗印(方向性)、存在意義、想いなどを示した会社経営における核の指針ですね。
これは非常に重要な問いです。
この問いに対する答えの質によって、その会社の命運が決まるといっても過言ではないです。
この経営理念に基づいて
- お客さん
- スタッフ(人材)
- 商品
- マーケティング
- デザイン
など、会社経営に関わる全てが決まります。
“経営の神様”と言われる松下幸之助は、『実践経営哲学』でこう述べています。
事業経営においては、例えば技術力も大事、販売力も大事、資金力も大事、また人も大事といったように大切な物は個々には色々あるが、一番根本になるのは、正しい経営理念である。それが根底にあってこそ、人も技術も資金も初めて真に生かされてくるし、また一面それらはそうした正しい経営理念のあるところから生まれていきやすいともいえる。だから経営の健全な発展を生むためには、まずこの経営理念を持つということから始めなくてはならない。そういうことを私は自分の六十年の体験を通じて身を以て実感してきているのである。
ビジネスには、集客、商品作成、販売、人材育成、技術、マネジメント、コミュニティ化、売上など、様々な側面があります。
ですが、まず最初に取り組むべきなのは、経営理念の構築だと、松下幸之助は述べています。
1-2.なぜ、経営理念の構築から取り組むべきなのか?
一体、なぜ経営理念の構築からビジネスは始めるべきなのか?
経営理念から始めないと、たとえ一時的に売上が上がったとしても、最終的には崩壊していくからです。
僕は、この典型的な例を思い浮かべるとき、真っ先に、闇金ウシジマくんの映画に出てくる「バンプス」というイベントサークルを思い出します。
画像出典:http://ymkn-ushijima-movie.com/
バンプスというイベントサークルは、3000人を超える大学生のネットワークを持つ小川純が始めたサークルです。
要は、それだけの数の大学生の知り合いがいれば、何か企業などがイベントする際に、人をいくらでも呼ぶことができます。
そういうネットワークの強みを使って、「自分がお金儲けをし、成り上がる」という動機で始めました。
こんな自分中心の動機で始めた、団体がどうなるのか、映画ではそれが詳細に描かれます。
いわば、理念がない状態ですね。
バンプスは、これまでの最大規模である、2000人規模のイベントを主催することになります。
このイベントさえ成功させれば、小川純は、「若い成功者」として世間から注目をに浴びることになり、一気に成功者への道を駆け上がることになります。
しかし、これまでで最大規模のイベントということもあって、集客に苦戦します。
普通の組織であれば、みんながここで一丸となって、頑張るはずですが、その様子は全く見えません。
というのも、トップ同様、所属しているメンバーも、自分都合にバンプスを利用することしか考えていないからです。
集客に苦戦する純は、バンプスに所属する幹部メンバーに
1人あたりチケットの売上50万円。これは絶対ノルマだからな
と強く言いますが、幹部メンバーは、ほぼ耳を貸しません。
純のこともリーダーとは認めておらず、「お父さん」とバカにし、「パンを買ってこい」などパシリとして使い、イベントに人を集めるためのミーティングをしても、途中で帰ります。
ですが、純は、それに対して何も言い返すことができません。
幹部メンバーは、お金があり、ルックスも良く、女子には人気があり、とても集客力があるからです。
純も裏では、
お前らなんか、女子を集めるためだけの餌だっつーの
と言っています。
そして、この幹部メンバーの一人が、とあるイベントで、不祥事を起こします。
イベントに参加した女子大生を無理矢理襲ったのです。
ですが、その相手が悪く、肉蝮というめちゃくちゃ凶暴性が高い男に狙われることになります。
画像出典:http://ymkn-ushijima-movie.com/
純は、拉致されている幹部を解放するために、金を幾度となく要求されたこと、イベントの場所代を借りるためのお金が足りなかったことの二つの動機がキッカケで、闇金にお金を借りに行くことになります。
この闇金は、10日で5割の利息が取られます。
純は、闇金自体が違法な存在なので、お金を借りるだけ借りて、トンズラしようと考えていました。
ですが、借りた相手は、丑嶋馨という金を貸したら、どんな手段を使ってでも、絶対に回収する闇金業者でした。
画像出典:http://ymkn-ushijima-movie.com/
純は、丑嶋から借りたお金で、幹部の解放と、2000人イベントを成功させることはできましたが、イベントの当日に丑嶋の取り立てにあいます。
借りた日からかなりの日数が経っていたので、回収金額は930万円にまで膨れ上がっていました。
当然、そんな金額すぐ払えるわけがありません。
ですが、丑嶋は、相手に保険金をかけて、この世から消してでも回収するほどの男です。
純は、その日のイベントの売上をすべて没収され、まだ足りないので、山に拉致されます。
もちろん、この世から消してでも、お金を回収するためです。
山奥の木にくくりつけられた、純は、丑嶋に
最後のチャンスをください。俺には3000人のネットワークがあります
と言います。
そして、丑嶋は、
3つの携帯から3人選べ、一人でも保証人になり、初回の利息を建て替える奴が出てくれば、お前の言葉を信用してやる。一人もいなければ、ここに放置する。
と言います。
純は、友達、母親、バンプスの幹部メンバーに電話をかけますが、結局、誰も電話に出ず、この世から消されました。
この話自体は、フィクションですが、経営理念を考える際に非常に重要な話なのです。
つまり、どれだけ、集客力があろうが、技術力があろうが、販売力があろうが、理念がなければ、一定のところで行き詰まり、必ず、全てが崩壊していくのです。
仲間を集めるとき、お客さんを集めるとき、多くの人は、目に見える「形」に頼ろうとします。
目に見える形とは、お金、名誉、承認、社会的ステータス、機能性、利便性、安定性などのことです。
でも、そうした分かりやすい「形」に惹かれて、引き寄せられた人というのは、「形」が変われば離れていきます。
そして、この世で「形」が変わらないものは存在しません。
例えば、「給料が高い」ことだけに魅力を感じて入社した社員は、その会社が不景気になって、給料が下がれば、すぐに次の転職先を探すでしょう。
また、「機能性」という目に見える形にだけ魅力を感じて、引き寄せられたお客さんは、更に機能性が高い商品が出てきたときにすぐに移ろいます。
その原理と同じです。
重要なのは、目に見えない「理念」を共有することです。
一番大切にしている理念(想い)は、不変であからこそ、それに共鳴した人を、ずっと繫ぎ止めてくれます。
繁栄していている企業ほど、そうした理念があり、それが社員にも、お客様にも共有されています。
例えば、中央タクシー株式会社という長野県No.1のタクシー会社があります。
中央タクシー代表の宇都宮さんは、自身の理念をこう語ります。
私は社員に『タクシーの仕事というのは、お客さまの人生に触れる仕事だ』と言っています。『たかがタクシー、なんて考え方のやつは出て行け』と言うわけです。障害のあるお客様が、ときに障害があるがゆえに、生きる力が萎える時もあると思います。そのときに中央タクシーに乗って、運転手の働いている姿や接遇、人柄に触れたときに、生きていくための力を得ることができるとおっしゃってくれている…このお客さまに、生きているための力を私たちは与えている、つまり、この障害のあるお客様の人生に触れているんだと。私たちは、このおばあちゃんの幸せを作っているのです。こんな素晴らしい仕事はないでしょう(『日本で一番大切にしたい会社3』坂本 光司)
宇都宮さんは「タクシーの仕事というのは、お客さまの人生に触れる仕事だ」と社員に言い続け、この会社はそれを体現しているのです。
高齢者にはさっと手を貸し、さりげなく買い物袋を運び、雨の日に傘がないお客様には傘をあげたり、徹底したドアサービス、自己紹介など、タクシー会社として考えうる理想的なサービスを提供しています。
しかも、それはマニュアル的な領域を超えて、社員が自主的に気づいて、お客様にやっているものまであるそうです。
例えば、ある時、タクシーには乗らない電動車椅子のお客さんがいたそうです。
その電動車椅子はタクシーには乗らないので、普通であれば断ります、
ですが、その乗務員は、「バッテリーを外せばなんとかいけるかもしれない」と考え、その場で、時間をかけて分解し、なんとかタクシーに乗せて、送っていったそうです。
普通は、そこまで気がつき、お客様のために動くことはできません。
面倒臭いとなり、断ります。
本気でお客様のことを思っているのではなく、お金のために働いているからです。
お金のために働いていると、いかに効率的に、稼ぐかしか考えません。
だから、マニュアル以上のことをやろうとしないし、気づけないし、動けないのです。
マニュアル以上のことをやろうと思ったら、その社長の想いが共有され、本気で「タクシー業は、お客様の人生に触れるという、誇るべき仕事なんだ」と本人が思うようになるしかありません。
中央タクシーは、その理念の共有があるのです。
ある社員の方は、こう語っています。
雨が降っているとき、長野駅に向かっていくと、前方の車道ギリギリのところで、おばあちゃんが傘もささずに立っているのが見えた。雨に濡れてびしょびしょです。「どうしたんだろう?」と思ったら、私の車に気がついたおばあちゃんが、荷物を置いて手をあげました。『私、待ってた。中央さん待ってたんだよ、私』と言ってくれました。雨宿りをしているとタクシーは拾えませんから、車道ギリギリで雨に打たれながらタクシーを待っていたそうです『私、待ってましたよーっ』て、ビショビショに濡れていたおばあちゃんの言葉を聞いたとき、私は、この会社の一員であることに誇りを感じました。
そうやって中央タクシーにおける自分の仕事に誇りを持つ社員がいれば、おいそれと離れはしません。
それはお客さんもしかりです。
タクシーなんて、機能面だけ見ると、極論どこの会社を選んでも目的地には運んでくれるので、同じです。
ですが、その目に見えない想いを感じた時、お客さんは、そこに唯一無二の価値を見出し、ずっと選び続けてくれるようになるのです。
結果として、中央タクシーは、タクシー業界の9割以上の会社が赤字と言われる中、車両が100台ほどしかないにも関わらず、売上15億円という大手と肩を並べるくらいの数字を出し続けているのです。
1-3.良い経営理念の3条件
続いては、良い経営理念の3条件というテーマでお話していきます。
経営理念には、良いものと、そうじゃないものがあります。
良い経営理念の条件としては
- 本音に基づいているのか
- 循環思想に基づいているか
- 体現しているか
の3つがあります。
1.その経営理念が本音に基づいているか
まず、最初の条件というのが、本音に基づいているのかです。
経営理念を単なる飾りとして考え、本音に基づかず、なんとなく作っている場合があります。
そういう場合は、人には伝わりません。
例えば、「人類の世界平和のために」と口では言っていても、自分の会社の売上ことばかり考えているような場合ですね。
その理念に想いが乗っていないからです。
想いが乗っていなければ、共鳴が起きないので、それが共有されることはありません。
経営理念で重要なのは、言葉の美しさではなく、そこに真の想いが宿っているかです。
それがあるからこそ、伝わるのです。
また、経営理念というのは、ビジネスを始めるにあたっての原点です。
理念を飾りとして作ってしまったら、戻るべき原点にはなり得ませんし、そうなれば、どれだけ儲かっていても、いずれ方向性を見失います。
真の想いとは、自分のこれまでの経験というストーリーに宿ります。
例えば、先ほどの中央タクシーの社員さんが自分の仕事に誇りを持てるようになったという話がありましたが、これは、雨の中、濡れながらでも、中央タクシーを待っているお客さんと出会えたという経験があるからこそ、本気でそう思えるのです。
宇都宮さんもそうです。
「タクシーは、お客様の人生に触れる仕事だ」とまで心の底から思えるようになったきっかけは、お父さんから言われたある言葉があったからでした。
宇都宮さんのお父さんは、元々はバス会社を経営しており、ある時に
長い労働争議が起こっているタクシー会社があるから再建してほしい
という依頼が地元の組合からあり、そのタクシー会社を買取ります。
ただ、買い取り、再建に取り組もうとしたのはいいものの、そのタクシー会社は、長い労働争議が原因で、社員の心は荒んでいました。
例えば、ある時、出社すると、一人のタクシー乗務員が「無賃乗車だ」と言って、一人の男性のお客さんに向かって、ホースで水をかけて、引きずり回すという事件が起きました。
この時点でタクシー乗務員としてあり得ないんですが、「手持ちは今ないが、家にはお金があるからついたら払う」とお客さんは言ってたそうです。
結局、奥さんが迎えに来ることになったのですが、ずぶ濡れの旦那さんを見て言葉を失い、旦那さんは屈辱で泣きながら
こんなタクシーには二度と乗りたくない
と吐き捨てるように言われて去っていたそうです。
そういう事件があって、「もうこんなタクシー会社は潰すべき」とお父さんに訴えましたが、赤字経営が続いていたこともあり、すぐには潰せないという状況がありました。
そこから、数年間、死に物狂いで働き、なんとか赤字はなくし、再建は果たしましたが、お父さんはその一年後に亡くなります。
そして、お父さんの死に際に、遺言として「理想とするタクシー会社をお前は作れ」と言われたそうです。
そういう経験があったからこそ、ああいう想いが出てきたのです。
それは、自分の経験に裏打ちされた本音の経営理念なのです。
自分の経験に裏打ちされているからこそ、説得力があり、共鳴を起こします。
2.その経営理念が循環思想に基づいているか
また、その経営理念が循環思想に基づいているのかというのも重要なポイントです。
循環思想というのは、「世のため、人のために」という考え方のことです。
「この会社は、何のために存在するのか?」ということを考える時に、「自分がお金を儲けるために」というようなベクトルが自分に向いたものは経営理念としては、成り立ちません。
例えば、「俺が楽してお金を儲けるために、手伝ってほしい」なんて言われても、共鳴は起きないのは目に見えています。
共鳴が起きなければ、ビジネスの循環は止まります。
ビジネスの自然な形とは
- 何のため、誰のためという理念を明確にし(経営理念の構築)
- お客さんに喜んでもらえる最高の商品を作り(商品作成)
- それを認知させ、多くの人に提供し(集客)
- フィードバックをもらいより良く改善していく(マネジメント)
の4ステップが循環することです。
どのステップが欠如したとしても、ビジネスというのは上手く回らないという仕組みになっています。
経営理念の構築というのは、そのファーストステップです。
ここを人の心に響くものにするからこそ、最高の商品が作れ、集客にも繋がり、フィードバックももらえるのです。
人が心打たれるのは、「世のため・人のため」という無私の想いです。
先ほどの中央タクシーの電動車椅子のお客さんの送迎は、距離的に言えば10分で済むところが、トータルで1時間も時間がかかったそうです。
そのタクシー乗務員が、もしも自分のことだけを考いたのであれば、絶対そんな行動はとりません。
だって、その時間を使えば、何人かお客さんを拾って売上を上げることも可能だからです。
でも、それをせずに、目の前のお客さまのことを持って行動した。
そういう一挙手一投足にお客さまの心は響くのです。
そこには「私」はありません。
これが二つ目の条件です。
3.その経営理念が体現されているか
3つ目の条件について。
自分のストーリーに基づき、心の底から「世のため・人のために」と思うことは非常に重要です。
それが経営理念のベースですし、これがないと始まりません。
ただ、そういう想いを作ったのであれば、それを現実的に体現していくのは非常に重要です。
体現できなければ、理念の共鳴力は、下がります。
例えば、「タクシーの仕事はお客さまの人生に触れること」だという想いを持っていたとしても、実際のサービスが、お客様に対して何の思いやりもないものだとしたら…と考えれば、理解できると思います。
体現しないと、経営理念はただの言葉に成り下がり、その力を失います。
「タクシーの仕事はお客さまの人生に触れること」だと、まずはトップが本気で思い行動し、その姿勢が社員全員を動かし、だからこそ、お客さまの心にも響いていき、循環していくのです。
もちろん、体現といっても、今自分が置かれている状況によって、それが完璧に体現できるという訳ではないこともあると思います。
例えば、どれだけ最高の飲食店を作りたくても、まだ技術が足りなかったり、金銭的な事情で、最高の素材を揃えられなかったりすることはあると思います。
でも、それはそれで全然問題ありません。
技術が足りなければ、最高の料理を作れるように日々努力し、素材を揃えられないのであれば、お客様に喜んでもらい、売上をどう上げるのかを考えていけば良いのです。
要は、今、自分が与えられている環境の中で、どういう姿勢でいるのかが問われるということです。
人は、言葉で心が動かされるのではなく、その人の行動で動かされるのです。
だから、経営理念というのは、ただの言葉ではなく、体現してこそ意味があるものなのです。
2.経営理念の作り方
では、続いては、具体的にどうやって経営理念を作れば良いのかという話をしていきたいと思います。
2-1.理想世界の構築から
経営理念は、理想世界を構築することから始まります。
理想世界というのは、一言で言えば、お客さんを導きたい理想の未来のことです。
これは、単にお金の為だけにビジネスをやっているのではなければ、必ずあります。
例えば、僕の場合で言えば、「志に目覚め、世のため・人のために尽くし、繁栄し、本物の輝きを放つ、ブランドという存在になってもらいたい」という想いがあります。
僕自身のサービスとしては、デザインやコンサルティングなど様々ありますが、全ては、そういうブランドという存在が世の中に溢れるようにするためにやっています。
これが簡単にいえば、理想世界です。
理想世界を考える時のポイントは、
- 誰に
- どうなってもらいたいのか
- 何のために
という2点をまず考えることです。
まず、「誰に」について。
一口にお客さんと言っても、様々な人がいると思います。
経営理念のポイントというのは、先ほども話したように、共感・共鳴を起こしていくことです。
そのためには、「どんな人に」共感・共鳴して欲しいのかを、あえて明確にする必要があります。
例えば、僕の場合であれば、「世のため・人のためという想いを持っている」「人の役に立ったり、幸せにする商品・サービスを持っているけど、広め方がわからない」など、決めています。
そうやって、絞り込むことで、「私のことだ」という風に思ってもらうことができます。
だから改めて、「どんな人に」お客さんになってもらいたいのか、大切にしたいのか、を考えるようにしましょう。
もちろん、これは先ほども言いましたが、自分のストーリー、本音に基づいて考える必要があります。
例えば、「こういうターゲットにすれば、儲かるだろう」というような考えは一切捨ててください。
お金を基準にした瞬間に、共感・共鳴が起きるような経営理念ではなくなります。
なので、これまでの自分のストーリーを振り返り、
- どんなお客さんがいたのか
- その中でも、どんな人に特に喜びを感じたのか
などを振り返り、言語化していきましょう。
そして、次に「どうなってもらいたいのか」ですね。
じゃあ、そのあえて、絞り込んだ人たちに、どうなってもらいたいのかということを考える必要があります。
その人たちにどうなってもらうのが、理想なのかということですね。
それを次に考えていきましょう。
僕の場合であれば、「ブランドになること」です。
この理想の未来を考える際には、色んな角度から、自分の仕事を深掘りしていくことが重要です。
例えば、改めて、自分の仕事の本質、役割とは何かを考えていく方法も有効です。
例えば、「デザインとは何か?」「デザインにはどういう機能があり、役割があるのか?」を考えていくということですね。
この問いに対する答えに、正解はないです。
僕の場合は、「デザインの役割というのは、その人・企業・商品の本質(本当の価値)を、世の中に伝わる形で、伝えていくこと」だと思っています。
ただ、見た目的にキレイなものをなんとなく作ればいいというわけではなく、それぞれにとっての本質を捉え、それを伝わる形で表現していくことこそが、デザインだというわけですね。
じゃあ、次に、
- どんな人・企業・商品が世の中に広まっていけばいいのか?
- デザインを提供する人たちが、どういう状態になれば理想と言えるのか?
などさらに深掘りして、考えていきます。
キーワードをどんどん出していくのもありですね。
そして、例えば、その際に「ブランド」というキーワードが出てきたのであれば、その言葉の定義を改めて考えるのもアリです。
「ブランドとは何か」という言葉の再定義をすることですね。
こうやって深掘りしていけばいくほど、ユニークな理想世界ができていきます。
また、自分が目指している理想世界を明確にするために、仮想敵を考えてみるのも良いですね。
つまり、
- どんな人をお客さんにはしたくないか
- どんな未来に連れていきたくないか
など、逆にふってみるということです。
一度、リサーチしてみるのもオススメです。
自分がいる業界の他の会社が、どういう経営理念を、想いを掲げて、その仕事をやっているのか。
この時に重要なのは、経営理念としてサイトに載せている言葉だけをみるのではなく、実体をみるようにしてください。
どんなお客さんを相手にしているのか、どんな商品・サービスを提供しているのか、どんな人が働いているのか、などですね。
そうやってみていくと、だんだん、理想世界が明確になっていきます。
また、自分の過去(ストーリー)を一度、棚卸してみるのもオススメです。
棚卸ししていると、一見、今の自分の仕事に関係のないような、出来事にも共通点を見出せるということがよくあります。
過去というのは、全て繋がっています。
極論を言えば、幼少期の頃に熱中していた遊びが、今の自分の仕事にも関連しているということもあります。
自分が掲げる経営理念は、先ほども言ったように、過去(ストーリー)とセットです。
自分は過去、これまでこういう経験をしてきたからこそ、今、こういう想いで、こういう経営理念を掲げているという風に表現できるのがベストですね。
1年前の経験からよりも、10年前の経験からという風に、その時間軸が長くなればなるほど、その経営理念には人を共感・共鳴させるエネルギーが出てきます。
そして、最終的に、全ての自分の過去に共通点を見出し、統合された時には、最大の力を持ちます。
その時には「自分はこのために生まれてきたんだ」という感覚が分かるようになります。
これが今の時点で、全ての人が見つかる訳ではありません。
ですが、過去を振り返ってみて、現在の仕事や、理想世界に通じる共通点はないのかということを探すのは非常に重要なので、ぜひ、探してみてください。
2-2.経営理念に昇華する
理想世界が言語化できたら、あとはそれを経営理念として表現を昇華していきましょう。
まだ今の時点であれば、表現として、長かったり、伝わりにくかったりしているということがあると思います。
表現形式として、一番わかりやすいのは、
- キャッチコピー
- サブコピー
に分ける方法ですね。
例えば、近畿大学の理念はこうです。
固定概念をぶっ壊す
「不可能を可能にするのが、研究だ」1970年、近代はその言葉を信念に、不可能と言われたマグロの完全養殖に挑んだ。時には笑われ、バカにされ…それでも、諦めなかった。費やした年月は30年以上。そして、やり遂げた。
そんな近代がいま、「大学の序列」に挑んでいる。笑うやつも、バカにするやつも、いるかもしれない。しかし我々は、不倒の精神で、やり遂げる。古くさい固定概念をぶっ壊す。不可能を可能にするのが近大だから。
この場合のキャッチコピーは「固定概念をぶっ壊す」です。
要は、理想世界を一言で言うと、何になるのかと言う部分ですね。
そして、サブコピーは、その下に続く説明文のことです。
これは要は、キャッチコピーを補足説明する文章です。
「固定概念をぶっ壊す」とはどういうことなのかが書かれています。
経営理念の表現として、重要なのは、キャッチコピーの部分です。
ここが切れ味の良い言葉で表現されていると非常に良いですね。
作り方としては、まず、ぼんやりとでも「こういうことを言いたいなあ」という文章をとにかく出してみます。
この時は、表現としてまとまってなくても良いです。
例えば、今回の近畿大学の場合でいうと、受験業界の中では偏差値によって、大学のグループ分けがされていたという現状があります。
関西の私立大学でいうと、トップグループは「関・関・同・立」の関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学。
そして次のグループが「産・近・甲・龍」の京都産業大学、近畿大学、甲南大学、龍谷大学。
この序列は、大学受験において、不動で、ただそれだけを見て、受験生も志望校を選ぶという現状がありました。
だから、志望者数でいっても「関・関・同・立」が人気で、次に続くのが「産・近・甲・龍」です。
この現状に、なんとか一石を投じたいとのことで、作られたのがこのキャッチコピーです。
なので、まずは、こういう風に、状況を整理し、長い文章でも良いので、方向性を決めます。
そして、それができれば、より切れ味の言葉にしていくというイメージですね。
切れ味の良い言葉にする主要なテクニックとしては、
- 常識とは逆のことを言う
- 既存の切れ味の良い言葉を参考にする
- 合わない言葉を組み合わせる
- 比喩で表現する
の4つがあります。
まずは、常識とは逆のことを言うについて。
これは、小泉元首相がよく使っていた「自民党をぶっ壊す」というフレーズなんかがそうですね。
小泉さん自身は、自民党に所属しているにも関わらず、自民党をぶっ壊すと言っているので、認知不協和が起きます。
つまり、「え、なんで?」と誰もが疑問に思う(認知不協和が起こる)ので、目に止まるということです。
この原理はシンプルで、常識とは逆のことを言うので、違和感を感じて目に止まるのです。
こういうコピーを作るときに重要なのは、「仮想敵」を考えてみることです。
自分が目指している理想世界とは、全く逆の方向性にいる相手ですね。
例えば、シャボン玉石けんのコピーは
無添加を疑え。
です。
「無添加」という言葉を聞くと、誰もが無条件で安心だと思いがちの言葉です。
でも、実際は、国から添加物だと認定されていない添加物を使っても、無添加なのです。
そういう偽物の無添加とは一線を画しているという意味で、シャボン玉石けんは、このコピーを使っています。
また、既存の切れ味の良い言葉を参考にするという方法も有効です。
近畿大学の「固定概念をぶっ壊す」も、恐らく、小泉元首相がよく使っていた「自民党をぶっ壊す」というフレーズを真似しています。
こんな風に切れ味の良い表現を参考にするのは、とても簡単ですし、有効です。
切れ味の良いコピーを集めて、それに当てはめて、考えてみると、アイディアもどんどん降りてきます。
また、合わない言葉を組み合わせるのも、良いですね。
例えば、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』なんかもそうですね。
ドラッカーの『マネジメント』は主に経営者が読む古典的な本であり、高校野球の女子マネージャーとは一見何も接点がないかのように見えます。
だからこそ、異質であり、コピーを見るだけで、記憶に残るんです。
そして、最後に、比喩で表現するのもオススメです。
比喩というのは、「これを別のもので例えるならなんと言う?」かを考えるということですね。
レッドブル、翼を授ける
という言葉は、これに当たりますね。
レッドブルは、エナジードリングですが、どんな効果がある、エナジードリンクなのかをとてもうまく表現できていると思います。
表現テクニックとしては、この4つがあります。
ただし、テクニックに偏らないことが重要です。
あくまでも、ストーリーに基づいていれば、切れ味が良いコピーを作れなくても、重みを感じれるので、どちらかというと、そういう経営理念を作っていきましょう。
3.経営理念の事例15選
では、最後に経営理念の事例を一気に紹介したいと思います。
今回紹介するのは、
- ストーリー、本音に基づいているか
- コピーの表現として上手いか
- 体現しているか
という基準で選定したので、ぜひ参考にしてみてください。
日本の観光をヤバくする
by 星野リゾート(観光)
新しい日本文化の創造
by SOUSOU(アパレル)
固定概念をぶっ壊す
by 近畿大学(教育)
むすんで、うみだす。
by 京都産業大学(教育)
28プロジェクト
by 品川女子学院(教育)
世の中から卒業をなくす
by スクー(教育)
紅茶の楽しみを本当の意味で「文化」にする
by ムレスナティー(紅茶)
お菓子で百薬の長を目指す
by 餅匠しづく(和菓子)
いい会社を作りましょう
by 伊那食品工業
食卓に温もりの魔法を
by タイガー魔法瓶(家電)
地球上で最も豊富な品ぞろえを提供し、お客さまの全てのニーズに応え続けます。
by Amazon(ネット通販)
すべての人のプライベートドライバー
by Uber(タクシー)
人にやさしいものは 自然にもやさしい
by シャボン玉石けん(石鹸)
あったらいいなをカタチにする
by 小林製薬
世界最高をお届けする
by ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(テーマパーク)
ぜひ、これらの事例も参考にしつつ、経営理念について考えてみてくださいね。
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4.経営理念のまとめ
では、最後に今回のまとめをしておきたいと思います。
まず、経営理念とは、「この会社は何のために存在するのか」というその会社の旗印、存在意義、想いなどを示した会社経営における指針だという話をしました。
これは松下幸之助も言っていますが、会社経営とは、この経営理念(想い)から始まります。
理念なき、会社経営は、どれだけスキル、人材、商品力などがあっても、長く繁栄していくことはあり得ません。
理念以外の部分というのは、目に見える形であり、それで人を惹きつけていると、その形が移ろいゆくときに人は離れてしまうからです。
理念という目に見えない想いは、そう移ろいゆくものではありません。
さらには、それは共鳴を起こし、より多くの人を繋ぎ止めてくれます。
だからこそ、経営理念の構築は必要なのです。
また、良い経営理念の条件としては、以下の3つを紹介しました。
- 本音に基づいているのか
- 循環思想に基づいているか
- 体現しているか
そして、経営理念の作り方についても、解説しました。
経営理念は、
- 誰に
- どうなってもらいたいか
- 何のために
という理想世界を描くことから始まります。
もちろん、これも自分のストーリーに基づく、真実であることが重要です。
ストーリーに基づいているからこそ、経営理念はパワーを持ちます。
そして表現にする際には、「こういうことを言いたい」という大まかな方向性でも良いので、書き出すようにしましょう。
書き出せたら、より切れ味のある表現へと昇華させていきます。
経営理念の表現としては、
- キャッチコピー
- サブコピー
の二段構えで表現するのがオススメです。
キャッチコピーは、作成した理想世界を一言で集約したもので、サブコピーは、キャッチコピーを補足説明したものです。す。
良いキャッチコピーを作るテクニックとしては
- 常識とは逆のことを言う
- 既存の切れ味の良い言葉を参考にする
- 合わない言葉を組み合わせる
- 比喩で表現する
の4つを紹介しました。
ぜひ、今回の記事を参考にしながら、経営理念について考えてみてくださいね。
では、今回は以上になります。お疲れ様でした。