どうも!ブランドクリエイターの中江です。
今日は『顧客視点の企業戦略: アンバサダープログラム的思考』という書籍を紹介します。
この書籍は、アジャイルメディア・ネットワークの藤崎実さんと徳力基彦さんが共著で書かれたもので、この内容は、会社経営をしている方や個人事業をされている方に、時代認識として知っておいてもらいたい内容が数多くあったので、今日はこちらの内容を一部シェアしていきたいと思います
新規集客に苦戦している。価格競争に悩んでいる」という方へおすすめの内容となっています。
Contents
1.マスマーケティング型事業モデルの終焉
どんな事業をするにせよ、私たちはこの時代の中に生きていて、この時代に影響されて生きているので、時代認識を知っておくというのは非常に重要です
この書籍の時代認識を一言で表現するなら、事業全体を「マスマーケティング型」から「顧客視点のアンバサダー型」へ移行することが、これからの事業において大切だということです
ざっくりと時代区分を分けるのであれば、マーケティングという概念が登場した1900年代が「マスマーケティング型の時代」で、インターネットが登場し、普及していった2000年代が「アンバサダー型の時代だ」ということです。
これは私の体感値ですが、2000年が始まって、もう20年以上経つわけなので、「アンバサダー型」に移行できている企業も数多く出てきましたが、まだまだ「マスマーケティング型」の発想で事業をしている人が多いと思います
そして、「マスマーケティング型」の発想で、事業をしている企業・個人ほど、価格競争に巻き込まれていたり、集客の不安を抱えていたり、事業に関する様々な悩みを抱えています。
2-1.マーケティングの原点
そもそも「マーケティング」という概念は、1900年代のアメリカで誕生しました。
この概念が登場した背景には、産業革命によってもたらされた、「大量生産・大量消費社会」があります。
工場の生産能力が上がり、鉄道網が普及するようになると、社会で初めて、需要よりも供給が上回るという状況が生まれました。
大量に生まれた商品をより多くの人に買ってもらう必要性が発生したわけです。
つまり
いかに大量生産した商品を、大量消費に結びつけられるか?
というのが、マーケティングの最大の関心ごとだったというわけです
そして、その実現を容易にしたのが、ラジオ、新聞、雑誌、テレビといったマスメディアの発展です。
マスメディア以前の時代の、認知拡大の手段は、基本的には口コミしかありませんでしたが、このマスメディアを使えば、それこそ、国中の人たちに、その商品やブランドの存在を認知させることができるようになったのです。
そして、当時の情報収集の手段のメインストリームは、マスメディアだったため、「認知させればさせるほど、商品が売れていく」という状態が生まれ、
いかに話題にさせるか?
というのがマーケティングにおける最大の関心ごとだったというわけです。
まとめると、旧時代の「マスマーケティング型」とは、マスマーケットに対して、マスプロダクションした製品を、マス広告を通じて、売り込むというモデルです。
このアメリカのマスマーケティング型の発想は、戦後の日本にも輸入され、マスメディアの発展も相まって、高度経済成長を作ることになります。
特に、日本では、テレビ放送の全国網羅や国民性も相まって、テレビの影響力が強く、マスメディアに載せれば、大量の商品が売れていったという時代が長く続きました
だから今でも
いかに多くの人に受け入れられる商品を作り、いかに広告を通じて、認知を広げ、魅力的に魅せて、売り込むか?
というマスマーケティング型の発想が根強く残っています。
1-2.マスマーケティング型施策の効果の低下
ですが、インターネットが普及し、生活の一部になったことによって、このマスマーケティング型の施策というのは、効果が低くなってきています。
まず、インターネットの普及によって何が一番大きく変わったのかというと、見込み客の情報収集能力です。
これまではマスメディアなどから一方的に流されてくる広告が、商品・サービスを知るための最大の情報源でした。
なので、情報優位性があり、
この商品はこんなに素晴らしいんですよ!
と言っていれば、広告を見た人は素直に信じて、購入する傾向にありました。
ですが、この情報優位性は、インターネットの普及により、低下していきます。
というのも、見込み客は、自分から商品・サービスの情報を取りにいけるようになり、積極的に比較・検討できるようになっていったからです。
どれだけ広告で素晴らしいことを書いていても、実際に購入したことがある人の口コミが、ポータルサイトやSNSでバレるようになりました。
さらにいうと、スマートフォンや様々なSNSが普及・発展し、マスメディアだけを見る人の割合は減っていき、人は自分の趣味趣向や価値観に合った情報だけを見るようになっていきます。
昔だったら、この年代の人なら「ほぼ共通して、全員見てる番組・ドラマ・アニメ・漫画」というのがあったのが、今の時代の人には、それがなくなってきています。
これは一つには、メディアの多様化の影響があります・
つまり、もはや、全国民を一つの価値観において、統合し、消費に誘導することは難しくなったということです。
そして、広告もマスメディアの広告だけではなく、インターネット広告が登場するようになりました。
マスメディア系の広告は、一回数百万円〜数千万円かかるので、それなりに体力のある企業しか出せませんでしたが、インターネット広告なら、1日数百円から気軽に出せるので、多くの中小企業や個人も広告を出稿するようになりました
インターネット広告の最大の特徴はターゲティングの精度です。
ダイエットの情報を日々検索している人には、ダイエットサプリメントや近所のパーソナルトレーニングジムの広告が表示されます。
だから、今の時代において、決定的に重要なのは「いかに多くの人に受け入れられる商品を作り、いかに多くの人に認知させるか?」という発想を転換させなければならないということです。
というのもその発想では「こんな質の高い商品がこんなに安いんですよ」という
コストパフォーマンスが高い
という価値軸にしか行きつかないからです。
この価値軸は確かに、最も多くの人の関心ごとであり、市場的には最大の顧客層が狙えます。
ですが、そういう企業は業界に一社あれば良いのです。
例えば、「お値段以上、ニトリ」や、ユニクロなんかもこの発想に近く、売上規模では業界最大手なわけですが、他の企業がいまさらこの価値軸で勝負しても、泥沼の価格競争が待っているだけです・
そして、こういった最大のパイを狙いに行く企業というのは、とんでもないお金をかけて、広告枠を買っているわけなので、後追いで、参入した企業が同じテイストで出したところで、誰の記憶にも残らないですし、心にも響かないわけです
今の時代は、情報も、商品も、エンタメも溢れている選択肢過剰の時代です。
人は日々、様々な情報に触れる中で、趣味趣向・価値観に合わせて、触れる情報を選んでいきます
だから、多くの人に響かせるようにすればするほど、響かない商品やブランドができてしまうというわけです。
1-3.顧客視点に立ち返る重要性
だから「いかに多くの人に売り込むか?」ではなく、例えば
- どんな人に届けたいのか?
- どんな人に使ってもらいたいのか?
- その人たちの人生をどう変えたいのか?
という顧客視点に立ち返る必要があるということです
断言できますが、この視点がなく、「いかに大量に売り込むか?」だけしか考えていない企業・個人ほど、事業が苦戦しています。
どれだけお金をかけて、新規集客の施策を打っても昔のようには効果が上がらないからです。
これは前回の記事でも話しましたが、広告などの新規キャンペーンは、情報が溢れ、広告出稿のプレイヤーが増えたこと、少子高齢化の加速によって、年々届きにくくなっています。
つまり、日本においては、新規集客の難易度が年々上がっているということです。
だから、重要なのは、顧客視点に立ち、特定の顧客に刺さるような商品・サービスを提供し、購入してもらった既存顧客をいかに大切にし、ファンにしていくるかということです。
新規集客の難易度が上がり続けている以上、事業を成立させるためには、既存顧客を大切にしていく施策こそが有効なのは言うまでもありません
既存顧客を大切にしていくとは、関係性を深め、「このブランドがなければ困る」「無償でもこのブランドを応援したい」というファンを増やしていくということです。
人が商品・サービスを購入するのは、必ずしも「ファンであるから」購入するというわけではありません
特に初めて買う人は
- たまたま広告で見かけたから
- コストパフォーマンスが良さそうだと思ったから
- 家から近いから
- クーポンが魅力的だったから
という吹けば飛ぶような理由で選ぶことが大半で、多くの顧客は「このブランドが明日消えたとしても何も困らない」と潜在的には思っています。
商品・サービスを買ってもらったのに、それくらいドライな関係だと、当然ですが、今後リピートしてくれる可能性は低いでしょうし、もっと良さそうな競合の商品・サービスが出れば、そっちに移るかもしれません。
だから、顧客との関係性を深め、ファンにしていくような仕組みが、今の時代には必須です。
顧客との関係性が深まり、ロイヤルティが高まると、リピートし続けてくれるようになります。
そして、それが究極的に極まっていくと、顧客は商品を買い続けてくれる存在ではなく、ブランドの存在を積極的に広めたり、応援してくれるアンバサダーへと変わります。
今の時代、口コミの力というのは年々高まっています。
ニールセンが2015年に実施した、広告信頼度グローバル調査によると、最も信頼度が高いのは、マスメディアの広告ではなく、「知人からの推奨」という口コミです
皮肉なことですが、テクノロジーが発展し、マスマーケティング以前で最も重要だった「口コミ」が新たな形で、最も影響力を持つようになったということです。
では、ロイヤルティが高いだけでなく、ブランドのことを積極的に応援してくれるにはどうすればいいのか?
このことについて深く知りたいという人は、アジャイルメディア・ネットワークの藤崎実さんと徳力基彦さんが共著で書かれた「顧客視点の企業戦略: アンバサダープログラム的思考」を読んでもらいたいのですが、今日は、「顧客視点のアンバサダー型」のモデルを一つ紹介したいと思います。
2.顧客視点のアンバサダー型モデルの成功事例
それが、カルビーの「じゃがりこ」というブランドです。
じゃがりこは、全国のコンビニやスーパーなどで売られている訳なのですが、この商品は、単純に社内で商品設計をして、広告を打って、販売するという従来のマスマーケティング型で運用されていません。
「じゃがりこ」というブランドは、顧客視点のアンバサダー型で運用されています。
その代表的な取り組みが「それいけ!じゃがり校」という、じゃがりこのファン向けの会員制サイトです。
画像出典:https://www.advertimes.com/
「学校」というだけあって、このファンサイトには誰から構わず登録できるわけではなく、12月〜2月にかけて実施される「じゃがりこに関する入試問題」を解いて、それにパスした人だけが入学を認められて、登録できるという仕様になっています。
だから、入学した生徒は、そもそもじゃがりこ愛が強いユーザーばかりです。
そして、入学すると、朝礼、授業など様々なイベントや活動に参加することができ、仕事の様子や商品発売などを知ることによって、よりじゃがりこに対するの活動を知ることができるようになるというわけです。
そして、ポイントなのは、このファンサイトは、ただただ、一方通行で情報を受け取る形ではないということです。
例えば、じゃがりこでは、テスト販売として、一部のコンビニエンスストアや地域に限定して新商品を販売することがあるのですが、その時に「今、こんな限定の新商品を、この地域に販売しているんですが、ぜひ買って食べて、感想をもらえませんか?」というようなお知らせをするそうです。
すると、生徒から、その新商品に対して「パッケージがイマイチ」「味が物足りない」など、信頼できる声がたくさん集まるのです
これはいわゆる調査会社が実施するような「アンケートで集まる声」とは質が違います。
調査会社で実施するパネル調査やアンケート調査は、基本的には、報酬を払うので、アルバイト的な要素が強く、
あまりにもストレートに本音を言ってしまうと、次の仕事をもらえないのではないか?
という不安がよぎるため、可もなく不可もなくという声が集まりやすいのです。
ですが、じゃがり校の生徒は、そんな忖度はしないので、非常に価値のある感想が集まるというわけです。
そして、その集まった声を反映して、商品を作り直して、本格リリースというプロセスを経て、全国で販売されるようになります。
ブランドの商品作成に、顧客が巻き込まれているので、自然と口コミが広がりやすくなります
他人が作った商品は特別な動機付けがない限り、積極的に広めようとはしませんが、自分が作成に関わったものなら積極的に広めようとします。
そして、その最たる例が、じゃがり校で1年間を通じて行われる「商品の共同開発」です。
じゃがり校では、生徒と一緒に、1年間かけて1つの商品をつくりあげる「新商品開発プロジェクト」を行っています。
生徒は
- 商品コンセプト
- 味
- パッケージ
- キャッチフレーズ
- プロモーション
など、1年をかけて商品づくりに関わることができます。
まずは、4月に生徒からフレーバー案を募集し、集まった1000案以上のアイディアから、商品開発担当者が約40案にまで絞り込み、そこからまた、生徒による投票やディスカッションを通じて、最終的にその年に開発する、1つのフレーバーを選び出すというような形でプロジェクトは進行していきます。
じゃがりこは毎月、新フレーバーが出ますが、ファンとの共同で開発した商品が、新フレーバーの中で年間トップの売上を記録することも多いそうです。
新規集客の難易度がますます高まる中で、このアンバサダー型のモデルは非常に重要になってくるので、ぜひ、今回のブログ記事をきっかけに、アンバサダーが生まれる仕組みづくりについて考えてみてください。
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