どうも!ブランドクリエイターの中江です。今回は「100年企業とは?事例・特徴から繁栄の極意までを完全解説」というテーマでお話していきたいと思います。
自分でビジネスをやるのであれば、できるだけ長く安定して経営をしていきたいというのは、誰も願うことです。
しかし、現実はそう甘くはありません。
起業後、1年で約60%の会社は潰れ、5年後になると、それが85%まで伸び、生き残れるのはたったの15%。10年後には94%の会社が潰れると言われています。
でも、一方で、日本という国は世界でも稀に見る長寿企業大国でもあるということをご存知でしょうか?
稀に見るというか、数で言えば、ダントツで世界一です。
帝国データバンクの統計によれば、日本において創業百年を超える「100年企業」の数は約2万6千社もあります(2013年8月現在)。
2位のドイツは数千社規模なのでダントツで1位なんですね。
創業100年といえば、昭和恐慌、世界大戦、ニクソン・ショック、石油危機、バブル経済の崩壊、リーマンショックなどなど、数々の時代の大きな荒波を乗り越えてきたというのだから、その凄さはわかるはずです。
なぜ、日本にこれだけ多くの長寿企業が存在できるのか?
実はそのヒントとなるのが、江戸時代のある思想家にあります。
今回の記事では、
- 100年企業の実例
- 100年企業の特徴
を紹介しつつ、この100年企業を生み出してきた経営思想の源流にある思想化についても紹介していきたいと思います。
では、早速始めていきましょう!
Contents
1.100年企業の3つの特徴
では、まず、最初に、100年企業の3つの特徴を事例と共に紹介していきたいと思います。
1-1.100年企業の特徴その1|不易と流行のバランス
まず、最初の100年企業の特徴は「不易と流行のバランス」です。
100年以上存続している企業というのは絶えず、時代の変化にさらされてきました。
そんな中で時代を超えて生き残るためには、常に自分の会社を時代の変化に合わせて、革新していけることが必要になります。
不易と流行のバランスというのは、時代の要請に応じて変えるべきところは変えて、守るべき伝統は残すということです。
例えば、江戸時代初期に創業された400年以上の歴史がある、山形県の菊池保寿堂はその典型例です。
菊池保寿堂は、金属を加熱し、溶かして型に流し込み、冷えたら型から取り出して出来た製品である「鋳物」を販売している会社です。
具体的な製品を上げると、茶の湯釜、鉄瓶、鋳物急須、彫刻、エクステリアの製造販売などがあります。
画像出典:https://wazuqu.jp/
最近の1番のヒット商品といえば、和鉄ポットです。
鋳物と聞けば、普段なじみのない古くさそうな伝統工芸品のようなイメージがあるのですが、この和鉄ポットを見ればそんなイメージは吹き飛んでしまいます。
芸術品のようなモダンな形と色使いのポットは、今の時代のニーズにマッチしており、爆発的な人気を博しています。
老舗企業というのは一見、伝統だけを守り続けているようなイメージがあります。
ですが、本当に伝統だけにしがみついていたら、時代から取り残されてしまいます。
その意味でも100年企業というのは、常に革新を続ける、挑戦し続けている企業とも言えるんですね。
でも、かといって、今まで継承してきた伝統を全て消し去るわけではない。
要はバランスが重要だということですね。
これからの時代を生き残るキーワードとして「身軽さ」というものがあります。
今の時代というのは、テクノロジーの進歩が進んだことによって、昔の時代に比べて時代の変化がかなり早くなっています。
だからこそ、今の時代には、柔軟にその変化に対応できることが求められています。
例えば、北海道の小樽市にある北一硝子もその典型です。
画像出典:https://otaru.gr.jp/
北一硝子の主な事業内容は硝子や硝子製品の製造販売でした。
北一硝子は、元々、石油ランプを主力商品として製造していましたが、電灯の普及でその販売を休止せざるを得なくなります。
その後、漁場に網を張るための必需品であるガラス製の浮き球作りを主力商品としますが、これも1977年に始まった「200海里規制」で漁業が衰退したことで休止せざるを得なくなりました。
そこで、3代目の社長である浅原さんは、ガラス工芸品を売り出す構想を思いつきました。
そして、小樽らしい石造倉庫を店舗として、「北一硝子三号館」をオープンさせます。
画像出典:http://otaru-sakaimachi.com/
北一硝子三号館では、硝子製品の販売だけでなく、硝子製品を豊富に使ったレストランや、制作体験もできます。
「小樽市に来なければ買えない」というコンセプトや、幻想的なレストランの空間は話題を呼び、多くの観光客を呼び込みました。
今まで本当に閑散としていた石造倉庫の通りが、観光客で賑わう小樽の繁華街にまでなりました。
小樽を再生させたとも言えます。
北一硝子としての守るべき「硝子」という伝統と、現代のニーズをまさに合わせた、不易と流行の事例になります。
1-2.100年企業の特徴その2|身の丈に合った経営
そして、次の共通項としては、身の丈にあった経営というものがあります。
これはどういうことかというと、無闇矢鱈(むやみやたら)に事業規模を拡大したりせず、今の自分のステージに見合った堅実な経営をするということですね。
例えば、碓氷勝三郎商店という100年企業が北海道の根室にあります。
碓氷勝三郎商店は「北の勝」という地酒を販売している酒造メーカーで、地元で絶大な人気を誇っています。
画像出典:http://ramenisno1.livedoor.biz/
特に「北の勝」は流通量が限られていて「幻の酒」とも言われています。
そのお酒作りへのこだわりは半端じゃなくて、質に納得いかなかったら、店頭に並べないというほどのこだわりぶりです。
1999年には瓶詰めまで終了したのに、結局販売しなかったというエピソードもあります。
5代目店主の碓氷ナミ子さんは経営方針をこう語ります。
目の届く量、手抜きをしないで造れる範囲で、納得のいく酒を造りたい。地元の旬の食材を引き立てる酒であり続けたい(『日本の百年企業』)
「北の勝」というお酒のクオリティを保つためには、今の範囲で十分なわけです。
これ以上手を広げてしまうと、「北の勝」は「北の勝」でなくなります。
もしかすると、売上をあげることにフォーカスすれば、多少基準を下げてでも、もっと広い地域で販売することも可能かもしれません。
でも、そんな売上よりも守りたい何かがあるということが100年企業にはあるのです。
このこだわりこそが、「北の勝」のファンを熱狂させ、その数を増やすのです。
根室市には「北の勝を愛する会」なんていうコミュニティが市民有志でできているほど、地元に愛されています。
それは、京都の老舗のカバン屋「一澤信三郎帆布」でも同じです。
画像出典:https://www.ichizawa.co.jp/
このカバン屋さんのコンセプトは
よそ行きの華やかさはないけれど、毎日飽きずに使えるかばん。何年も何十年も使い込むほどに、「いい顔になってきたね」といわれるような表情のあるかばん。そんなかばんでありたいものです。
です。
毎日、使い続けるほどに味が出てくる、何年も何十年も使い込めるようなかばんを作ることを目指しているんですよね。
実際に、この一澤信三郎帆布のかばんは、それだけ品質の高いもので、このかばんを求めて、日本全国から、世界中からお客さんがやってきます。
画像出典:https://www.ichizawa.co.jp/
ただ、これも碓氷勝三郎商店と同様で、かばんの品質を高く保つために、全国に店舗展開をしていません。
全国展開すれば、製造から販売までの一連のプロセスに、目が行き届かなくなり、品質が落ちてしまうからです。
これだけ人気なかばんなので、全国で売り出せば、売上は上がるかもしれませんが、ブランドの理想のために、あえてそれをしないのです。
1-3.100年企業の特徴その3|家族主義
日本にある2万6千社の100年企業の事業規模は、ほとんど小さい場合が多いです。
売上5億円未満の会社が全体の70%を占め、50%が従業員数9名以下です。
時代を超えて生き残っていくためには、従業員との関係性も重要な要素です。
従業員のことを家族のように大切に思い、働きやすい環境を提供することで、従業員との関係性は単純にお金以上のものとなり、そこには強固な結びつきが生まれ、従業員が力を尽くしてくれるという状況が生まれます。
この家族主義的な経営スタイルも100年企業の共通項の一つです。
伊藤忠商事の創業者となった伊藤忠兵衛は、まさにこの家族主義を実践していました。
画像出典:https://www.marubeni.com/
例えば、奉公人に対して、「牛鍋の日」という日を月に何回か設けました。
牛鍋というのは今でいうところのすき焼きですね。
当時の奉公人が食べるご飯は、本当に質素でした。
1日2食で、ごはん、漬物、味噌汁が基本で、おかずは魚がつくかつかないかです。
当時の商家ではどこでもこれが普通ですが、忠兵衛は奉公人に、より精をつけて頑張ってもらいたいと思い、牛鍋の日を設けたのです。
また、時には相撲や芝居にも連れて行ったり、仕事以上の付き合いをするようになり、奉公人たちの信頼を勝ち得ていったのでした。
これは西洋的で、合理的な企業であれば、あり得ない経営判断です。
たとえ、奉公人にそう接したとしても、利益が上がる訳ではないからです。
でも、だからこそ、お金や仕事を超えた繋がりが、従業員と生まれるのです。
どういう理由で従業員に働いてもらっているのかは本当に重要です。
給料をこれだけもらっているから、生活のために働いている
という従業員が多ければ多いほど、その企業は脆弱です。
不況になったら、条件の良い会社が見つかったら、すぐに誰もが離れていくでしょう。
そうすれば、企業としては崩壊していきます。
本当に家族主義になれば、そんな損得関係を超えて、従業員も付き合ってくれるようになります。
例えば、先ほど紹介した、一澤信三郎帆布なんかがそうです。
一澤信三郎帆布では、ある時、お家騒動が起きて、これまで会社経営に携わり、かばん作りの現場にいた、弟の信三郎が会社を追われることになりました。
従業員は新しい経営者の兄についていくか、弟の信三郎についていくか迫られることになります。
でも、信三郎の方について行っても、工場も何もかも取り上げられた状態なので、損得で言えば、新しい経営者の兄についていくのが普通です。
でも、信三郎さんは、従業員と家族のような関係を築いていたからこそ、全員が付いてきました。
社長や奧さんと一緒だから、ここで働いているんです。僕らは新しい人についていくことはできません。社長がやめるというのなら、一緒にやめる道を選びます。(『一澤信三郎帆布物語』菅聖子)
それだけ熱意のある従業員がいたからこそ、一澤信三郎帆布は復活し、今でも繁栄の状態を築いています。
家族主義とは一言で言うなら、損得関係を超えた、関係性を築くということですね。
2.100年企業の源流にある思想
では、続いて、100年企業の源流にある思想についてご紹介したいと思います。
日本に存在する100年企業の経営手法の源流にあるのは、石田梅岩の思想だと多くの研究者が指摘しています。
石田梅岩は元々は京都の商人で、その後、自らの経験をもとに編み出した経営思想を社会に広めていった人です。
その思想は、同時代の人の心を動かし、大きな影響を与え、石田梅岩の死後も弟子たちによって普及され続け、松下幸之助にも大きな影響を与えたとされています。
そんな彼の思想を続いてはご紹介していきたいと思います。
2-1.100年企業を生んだ思想その1|正直
石田梅岩が生まれたのは1685年の江戸時代の前・中期で、そこから約60年の人生を送りました。
この頃は、徳川幕府の治世が安定して、農産物の生産性の工場や流通システムが整備されて、急速に商業社会が成立していくような状況にありました。
当時は武士の社会であり、バブル崩壊(一部の商人が大儲けする中で、多くの人が疲弊した)の影響もあり、商人というのは卑しい存在であるとされていました。
そんな時代背景にありながら、石田梅岩は「商人」というものに対して、こう説いています。
正当な経済行為の結果としてもたらされる富は武士の禄と同じで、何ら恥じるものではない。堂々と儲ければ良い。ただし、その利は正直と倹約によって得るものでなければならない。また、その財は最終的に世のために役立てなくてはならない。(『魂の商人-石田梅岩が語ったこと』山岡正義)
つまり、石田梅岩は、誠実に儲け、儲けたお金は社会に還元することの重要性を説いたわけです。
どんな業種業界であれ、ビジネスの在り方として
- いかに相手を騙して、自分の利益を最大限に取れるようにするのか
- 真摯に誠実に相手と向き合い、お役立ちした上で、利益を取るのか
という2種類があります。
不誠実に儲けた100万円と、誠実に儲けた100万円。
数字で見れば、利益は同じですが、そこには大きな違いが有ると思うのです。
僕は普段コンサル以外にも、ホームページなどのWeb制作もするのですが、このWeb制作業界もこの通りに完全に二つに分かれています。
Web業界のことって、普通の人からするとよく分からないことが多いと思います。
例えば、何にどれくらいかかるのかとか。どんな業者がいるのかとか。業界がどんな構造になっているのかとか。諸々の専門用語とか。
だからこそ、Webのことを何も知らない人の無知につけ込んで、できるだけ有利な条件で契約させ、お金だけサクッととって、適当に納品というパターンの会社が結構あります(というか、大抵がそうです)。
というか、これは構造上そうなっています。
例えば、ホームページを作るとなると、ある程度ちゃんとしたところに頼もうとすると、最低でも50~100万円くらいはかかるわけです。
それを制作するには、スタッフの人件費だったり、その他、諸々の固定費(家賃・機材など)がかかります。
制作会社にとっては、お客さんと真摯に向き合えば向き合うほど、制作に時間がかかるわけで、時間がかかれば、当然のことながら、儲けは減るわけです。
だから、大抵の場合は、可能な限り早く納品しようとして、利益の確保に走ります。
スピードを上げると、細部のところで妥協せざるを得なくなり、結局は効果の上がらないホームページが世の中にまた一つ誕生します。
無知なお客さんを騙して、騙して、さっさと契約して、お金を払ってもらって、短期間に適当なものを納品してしまえば、一番利益が上がるわけです。
でも、わかると思うんですが、この不誠実さって後に続きません。
こうやって騙されたとそのお客さんが思ってしまえば、二度とリピートはされないですし、時代を超えて支持されるようなことにはなりません。
だからこそ、誠実さって重要なんですね。
石田梅岩は誠実さという観点から、良い商人とは、どういうものかをこのように語ります。
あれこれと言葉を使って相手を言いくるめようとするのでは、良い商人とは言えません。何事もありのままにいうのが良い商人なんです。自分に他人の誠実・不誠実が明らかなように、自分の誠実・不誠実を他人は簡単に見抜くものです。このことに気づかない人が多い。この道理を心得ていれば、言葉を飾らず、ありのままにいうのが常となるので、あいつは正直者だと人から信用され、その結果、よその倍売ることも可能になるのです。人に正直だと思われ、人から警戒されない人間でなくては、商人として決して成功はしないものです。(『魂の商人-石田梅岩が語ったこと』山岡正義)
- いかにして自分の利益を最大限にしようか
- どうやれば、相手から搾り取ることができるだろうか
という自分視点の観点しかなく、相手から何かを奪ってやろうとする会社は長続きしないってことですね。
当然といえば、当然なんですが、目の前の利益に目が眩んでしまって、それができないという会社はどの業種・業界にも多いのです。
常に、自分視点ではなく、お客様(=社会)の視点に立って物事をまず考えろという視点は、江戸時代ではとても斬新なものでした。
この思想もやはり多くの100年企業に掲げられている思想に共通しているものがあります。
例えば、京都にある創業1689年の半兵衞麩というお麩を売っている企業があります。
ここの企業は、先代が石田梅岩の思想に大きく影響を受け、家訓には「先義後利」(義を先んじて、利は後とする)というものを掲げています。
義とは「正しい人の道」を意味します。
利とは「人の強欲」(金銭欲や出世欲)のことを指します。
つまり、まずはお客様にお役立ちする商売をする。
それによって得た利益を社会(=お客様も含む)に還元していくことができれば、栄えることができるということですね。
この順序が逆になると、破滅への道というわけです。つまり、まずは利(金銭欲や出世欲などの強欲)に走ってしまうと、うまくいかないわけです。
2-2.100年企業を生んだ思想その2|顧客優先
石田梅岩の思想は一貫して、主客合一を説きます。
ビジネスの用語に直すと、主(=自分・会社)という存在は、客(=お客様・社会)の存在なしには成立し得ないというものです。
主と客が分離している考え方でいれば、「自分が儲けること」だけしか考えません。
主と客が一緒になっている場合は、「先義後利」という考え方にもなるわけですね。
以前、書いたビジネスコラムの『商売繁盛の天才-デパートを発明したブシコーの革命的な手法』という記事で、デパートを発明した商人であるアリスティッド・ブシコーの話をしました。
ブシコーは「お客の信頼こそが最高の資産だ」という考えのもとに、ビジネスを拡大していきました。
この考え方は当時の19世紀のパリでは非常に斬新な考え方だったのですが、石田梅岩はその200年も前に顧客優先の重要性を説いていました。
商売や取引における重点を自分ではなく、まずは先方に置く。その顧客優先の立ち位置こそ商売繁盛の骨法であり、勘所である。(『魂の商人-石田梅岩が語ったこと』山岡正義)
この顧客優先という視点を常に持ち続けるかどうかが、その会社の質の全てを決めると言っても過言じゃないでしょう。
それは接客にも現れますし、セールスページやホームページにも現れますし、商品・サービスの質にも現れます。
さらに石田梅岩は進んで、顧客優先に関してこう述べます。
富の主人は天下の人々である。だから、そのお客様が惜しく思っているお金を喜んで払ってくれるような、お客さま本位のよい商品、よいサービスを提供するのが商売の基本であり、商売で儲けるためには何よりもお客さまの「心にかなう」ことを第一に考えなくてはならない(『魂の商人-石田梅岩が語ったこと』山岡正義)
商売で正しく、誠実に儲けるというのは良いことなんです。
ただ、それは本当にお客様にお役立ちするものでなければならないということですね。
1-3.100年企業を生んだ思想その3|能力主義と家族主義の融合
フランスの経済学者のミシェル=アルベールは『資本主義対資本主義』という著書の中で、「アングロサクソン型の資本主義」と「ライン型の資本主義」の存在を指摘します。
アングロサクソン型の資本主義とは、アメリカや英国を中心とした欧米諸国に見られる経営スタイルです。
簡単に言えば、株主の利益を最優先し、もし業績が悪化してしまえば、株主の価値を守る必要が出てくるので、積極的に人員削減を行うというものです。
賃金制度としては、成果主義で、自己責任という価値観を重要視します。
一方で、ライン型の資本主義とは、ドイツや日本に見られる経営スタイルです。
簡単に言えば、株主だけでなく、従業員、お客様、取引先、社会などの関係性を重要視します。
賃金制度としては、年功序列と終身雇用を重要視します。
もちろん、時代を超えて反映している企業の経営スタイルはどちらかというと、「ライン型の資本主義」です。
主客合一に近い考え方ですね。
日本とドイツは100年企業の数で言ってもワンツーフィニッシュですからね。
ただ、日本は、バブル崩壊後、「ライン型の資本主義」から「アングロサクソン型の資本主義」に移行していってると指摘されています。
労働者派遣法などが通ることで、雇用が流動的になり、成果主義や自己責任という価値観が広がっていきました。
だんだん、欧米化してきているんですね。
今の所、この経営スタイルで日本は上手くいっていないと思われます。
もちろん、どちらの経営スタイルにも一長一短があります。
「アングロサクソン型の資本主義」は成果を出せば出すほど、報酬も高くなり、一見良さそうにも見えます。
ですが、企業と従業員を結びつける絆がお金しかありません。
成果を出したのに、それが評価してもらえないのであれば、他の企業に行きます。
それに、実力がなければ、雇用が不安定化するというデメリットもあります。
一方で「ライン型の資本主義」は、雇用が安定していて、対従業員という関係性ではなく、対家族というような一体感が生まれます。
なので、社員のモチベーションは高くなりますし、必然的にそこにはお金以外の絆があります。
ただし、年功序列という制度を取っているため、既得権益が発生し、どれだけ若手が成果を出しても還元されにくいというようなデメリットもあります。
では、石田梅岩の考えはどうかというと、彼は能力主義(=アングロサクソン型)と家族主義(=ライン型)の融合の重要性を説きます。
働きのいい人間の報酬は高くするべき…彼の言う能力主義とは、あくまで民主的マネジメントや家族主義を前提にしたものです。また、ただ単に成果と報酬をイコール化するのではなく、年齢や勤続年数、能力や実績などを複合的に勘案した−その点で公平な−人物査定や人事評価を想定していたようにも思われます。(『魂の商人-石田梅岩が語ったこと』山岡正義)
「最近の若い奴は簡単に仕事を辞める」というのはよく言われることですが、その原因の一つには、日本がアングロサクソン型の資本主義に移行しようとしていることが挙げられます。
だって、今、どの企業に努めようが、終身雇用なんてものは保障されないし、いつ企業が倒産するかもわからない。
そんな状況下の中、給料も安くて、自分の将来にもほとんど役に立たないような単純作業ばかりさせられていたら、合理的な判断として辞めてしまうと思います。
でも、かといって、本当に成果をあげる人に対して、正しい評価を下す制度がないのも問題です。
単に年上というだけで、なんの成果も上げずに威張り腐られても、会社に既得権益ができ、どんどん腐っていくだけだからです。
だからこそ、石田梅岩は成果主義と家族主義の融合を説いたんですね。
2-4.100年企業を生んだ思想その2|真の商人とは
石田梅岩は、真の商人(=ビジネスマン)とはどういうものなのかを、このように説きます。
実の商人は、先も立ち、我も立つことを思うなり
これはどういうことなのかというと、「真の商人(=ビジネスマン)とは、まず先方(お客様)にお客立ちし、その上で自分の身を立てる(=利益を上げる)ことができる人」のことだという意味です。
最初からずーっと、顧客優先の話をしてきましたが、顧客優先だけを追求していき、自分の利益をちゃんと確保できないようではダメというわけです。
先ほどのホームページ制作の例で言うと、お客様に親身に寄り添い、30万円で受注したホームページを1年間かけて制作し、人件費などの諸経費を差し引いたら、赤字でした。
というのでは、倒産してしまいます。
親身に寄り添いながら、かつ利益も確保できねければいけないんですね。
利益が確保できなければ、ビジネスも上手く回らないですし、社会(=お客様も含む)に対して還元できないので、うまく善循環の構造ができないというわけです。
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3.100年企業のまとめ
では、最後に今回のまとめをしておきたいと思います。
まずは、100年企業の3つの特徴を
- 不易と流行のバランス:守るべき伝統は守り、変えるべきところは革新する
- 身の丈に合った経営:無闇矢鱈に規模を拡大せず、堅実な経営をする
- 家族主義:従業員を家族のように大切にする
事例とともに紹介していきました。
また、最後に100年企業の思想の源流も紹介しました。
100年企業の思想の源流には、石田梅岩という江戸時代の思想家の哲学が大いに関係しています。
石田梅岩の中心的な思想は、以下の通りです。
- 正直:真摯に誠実に相手と向き合い、お役立ちした上で、利益を取る
- 顧客優先:常に顧客の目線からものを考える
- 能力主義と家族主義の融合:成果は正しく評価し、かつ従業員を家族のように大切にする
- 実の商人とは:先も立ち、我も立つこと思うなり
いかがでしたでしょうか。
ぜひ今回の記事を見ながら、ご自身のビジネスに反映できるところがあれば、反映してみてくださいね。
では、今回は以上になります。お疲れ様でした!