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2021.8.4 (更新日:2021.8.4) | ブランディング戦略

ミッション・ビジョン・バリューとは何か?必要性や具体例を徹底解説

ミッション・ビジョン・バリューとは何か?必要性や具体例を徹底解説

どうも!ブランドクリエイターの中江です。

今日は「ミッション・ビジョン・バリューとは何か?」というテーマでお話していきたいと思います。

「ミッション・ビジョン・バリュー」という言葉自体は、経営者や経営者を目指す方であれば、一度は聞いたことがあるかとは思います

この言葉自体は「現代経営学」や「マネジメント」の発明者として知られる経営学者、ピーター・ドラッカーが2003年に提唱を始めたものになります。

ピーター・ドラッカー
画像出典:https://u-note.me/

ですが、そもそも、この「ミッション・ビジョン・バリュー」とは具体的に何を意味するのか、それぞれの違いは何か、というか、そもそもこんなものは作る必要があるのか、という疑問に思っている人も多いのではないでしょうか?

1.ミッション・ビジョン・バリューとは何か

まずは、ミッション・ビジョン・バリューについての意味を解説していきます。

ミッションとは、その企業の使命であり、

何のために経営をしているのか?

という、その会社の存在意義のようなものです。

そして、ビジョンとは、具体的な、企業が目指す将来像のことで、バリューとは、具体的にそのミッションやビジョンを実現していくために、必要な価値観や行動基準のことです。

いわゆる概念なわけですが

これってそもそも会社経営に必要なのか?

と疑問に思い、そんなものは作っていないという企業の方が大半だと思います。

確かに、このミッション・ビジョン・バリューを作らなくても、様々な売上UPの方法などを学び、短期的に売上を作っていくことができるでしょう。

ですが、ミッション・ビジョン・バリューというのは、長期的に企業を繁栄させて、圧倒的なブランドを確立していくためには必ず必要になってくるものだと思います。

2.ミッション・ビジョン・バリューの必要性

例えば、その必要性を認識させてくれる、最たる例が「株式会社・中川政七商店」です。

中川政七商店

中川政七商店は、1716年に奈良で創業され、300年以上も続く、日本を代表する超老舗企業です。

今では、雑誌やテレビなどのマスメディア、百貨店などにもよく入っているので、名前は知っているという人も多いのではないでしょうか。

中川政七商店は、手績み、手織りの麻織物を作り続け、奈良晒が、徳川幕府から御用品指定を受けたり、他の代でも、宮内庁御用達の栄誉も受けたりしてきました。

そして、時代は移り変わり、13代目の当主に就任したのは、中川淳さんの代で、中川政七商店は大きな飛躍を遂げることになります。

中川淳
画像出典:http://kimamana-topic.com/

中川さんは、京都大学を卒業後、そのまま家業の中川政七商店には入社せずに、富士通に入社します。

そこで、社会人経験の基礎を積むことになり、それなりに充実した日々を過ごしていた訳ですが、富士通のようなあまりにも大きな組織では、上に昇り詰めて、成り上がるためには時間がかかり過ぎることがわかったことと、

もっと、自分で事業を動かしている実感があって、やればやるだけ手応えが感じられて、成果次第でさらに大きな仕事を任せてもらえる環境で働きたい

と思ったことをきっかけに、入社2年目で、退職を決意し、2002年に、中川政七商店に入ることになります。

当時の中川政七商店は、父親が担当する、茶道具全般を扱う第一事業部と、母親が担当する麻を使った生活雑貨を扱う第二事業部がありましたが、売上も利益も圧倒的に足りず、経営は苦境に立たされていました。

特に第二事業部では、当たり前のことが当たり前にできていない状況が多く見受けられました。

例えば、生産管理がそうでした。

まず、この第二事業部には「生産管理」という概念そのものがなかったそうです。

例えば、直営店でもコーナーを置く、百貨店でも人気のAという商品が常に品切れを起こしている一方で、あまり人気がないBという商品の在庫がどんどん積み上がっているという具合です。

Aの商品って次はいつ何個完成するのか?

と聞いても誰も答えられず、人気のないBは、明日も明後日も納品されるという状況でした

「なぜ、人気のAを作らないで、Bを作るのか」と聞けば、

Bの方がAよりも作りやすいから

という答えが返ってきました

それもそのはず、第二事業部の母親と右腕の社員は、ミセス層に人気があるデザイナーであり、経営にはあまり関心がなかったからです。

これはやりがいがあると感じた、中川さんは父親に頼んで、第二事業部に移り、少しずつ立て直しを図ることになります。

遊中川
画像出典:https://story.nakagawa-masashichi.jp/

そして、入社して、1年半ほど経った時に、第二事業部の唯一のブランドである「遊中川」が、玉川高島屋にオープンしました。

「遊中川」は「日本の布」をコンセプトに、日本に古くから伝わる素材・技術・意匠と今の感覚をあわせたテキスタイルを提案するブランドです。

そんな時に、中川さんは、同じく玉川高島屋で、テナント出店していたオーガニックコットンブランドの「天衣無縫」を運営する藤澤社長に

あなたは、何のために会社を経営しているのか?

と聞かれたそうです

いわゆるミッションを聞かれた訳ですね。

そう聞かれた、中川さんは

ただ勝ちたいだけなんです

と答えました。

実際にこういう経営者は多いと思います。

  • 競争に勝って、成り上がりたい
  • 大きいことを成し遂げたい
  • 上場したい
  • 年商100億の企業を作りたい

ということを目的に、経営する人ですね

中川さんも、元々はそういうタイプだったそうです。

ですが、新ブランドを立ち上げ、業績が好調になり、組織が大きくなるにつれて、

何のために会社を経営しているのか?という問いに対する、もっと違う答えが必要だ

という風に、感じるようになります

中川さんは、中川政七商店で経験を積むにつれて、日本の伝統工芸という業界の厳しさを知るようになります。

年の瀬になると、経営悪化という理由だけでなく、後継者がいないということで廃業する取引先が、毎年、必ず挨拶に来きます。

それも技術力や実績があるところも多く、中には、業界の先行きが見えないから、子どもには継がせたくないというところも多かったそうです。

というのも、日本の伝統工芸品の市場は、この40年で右肩下がりの、縮小を続けていってるからです。

1980年には、年間5400億円あった生産額は、2014年には1000億円になり、約8割も減少してしまいました。

これってとても衝撃的な数字で、高い技術力を持って、真っ当に商売していても、売上が、80%減っているようなものです。

また、伝統工芸品というのは、基本的に分業体制で作られています。

例えば、焼き物の場合、原型制作、生地作り、素焼き、絵付けなど、それぞれの工程に、型屋、生地屋、窯元に所属する職人が担当します。

だから、一社か二社、あるいは一人か二人が、技術を継承せずに、廃業か引退した場合、その伝統工芸品を二度と作れないという状況になってしまうのです。

だから、どれだけ今、自社の業績が好調だからといって、伝統工芸の業界全体がそうした大きな流れの中にいるので、放っておいたら、中川政七商店も成り立たなくなります。

そして、日本の伝統工芸が失われ、伝統工芸品がなくなれば、これまで日本の中に息づいてきた、日本の暮らし自体が失われてしまいます。

こういったことに気づいた時に、中川さんは

日本の工芸を元気にしたい

と心の底から思えるようになったそうです。

そして、2007年に

日本の工芸を元気にする!

というミッションが定まりました。

そして、ビジョンは、

日本の工芸各社が経営的に自立し、ものづくりに誇りを取り戻すこと。そして地域が潤い、日本人が誇りを取り戻し世界に工芸大国日本と言うブランドを作る(『日本の工芸を元気にする』中川政七)

ということです。

そうすれば、日本は、100年後も工芸が人々の暮らしと共にあるようような国になるでしょう。

中川政七商店は、全ての事業戦略をこのミッションやビジョンに基づいて行っているからこそ、業界では異質な存在となっています。

スタートは、茶道具や麻を使った生活雑貨を扱う製造小売事業だけをやっている一企業でしたが、今では、中川政七商店のような、全国の伝統工芸品の産地の一番星を作るために、同業者の伝統工芸品を扱う企業のコンサルティング事業を行なったり、その一番星を起点に、産地の衰退を止めて、産地を復活させる活動もしています。

まずは、全国の各県を代表する工芸品メーカーがなければ、伝統工芸の復活はあり得ません。

だからこそ、これまで中川政七商店で培ってきたノウハウを活かして、コンサルティング事業を行い、各県を代表する伝統工芸品を扱う、新たなブランドを作ってもらいます。

ただ、それだけでなく、その一番星となる企業を中心に、これまで分業生産制だった体制を、資本集約により、製造プロセスを統合させる必要もあります。

じゃないと、どれだけ製品が売れても、後継者が現れなければ、いずれ製造できなくなってしまうからです。

そして、販売や生産体制だけでなく、さらに言えば、伝統工芸のファンも作っていかなければ、衰退は免れません。

そのために掲げたのが、一番星を中心とした、産地の産業観光化です。

例えば、長崎県の波佐見町(焼き物で有名な有田の隣町)に、中川政七商店がコンサルティングによって、再生させた「焼き物問屋・マルヒロ」という企業があります。

中川さんはマルヒロの代表の馬場さんに一から経営のことを教え込み、オリジナル商品を共同開発し、2010年にHASAMIというブランドを立ち上げ、倒産寸前の状態から、V字回復をさせました。

HASAMI
画像出典:https://www.nakagawa-masashichi.jp/

ただ、この1企業を再生させるだけでは、いけません。

実際に、下請けの工房などの廃業は、どんどん進んでいってるため、このままいけば、いずれHASAMIブランドも潰れてしまいます

もっと、根本的に、「波佐見の焼き物」の需要を復活させるほどのインパクトが必要になります。

そこで、マルヒロは、波佐見町にある1200坪の土地を買取りました。


画像出典:https://www.hasamiyaki.jp/

そこに大きな公園を作り、公園の中央では、波佐見焼の元請け・下請け揃ってのイベントを行えるようなスペースを設けたり、波佐見焼の直売店やカフェを作って、地元の食材を楽しめるような場所を作ろうという構想です。


画像出典:https://www.hasamiyaki.jp/

さらにここに宿があれば、立派な観光地となります。

産地が観光地化すれば、多くの人が産地に足を運ぶことになります。

産地に足を運んだ人は、作り手の仕事ぶりを見れたり、話を聞けたり、自分でも体験することによって、「波佐見焼」という完成系のプロセスを体感します。

伝統工芸品は、市場において、高価な品物ですが、そうしたプロセスを知ることによって、「なぜ、高いのか?」がわかるようになる訳です。

これはただ、本やネットでプロセスを知るだけでは得難い体験となり、波佐見焼のファンを増やすことに繋がります。

こういうような産地を全国に作っていくことが、工芸大国日本を作ることに繋がっていくという訳です。

こういうような構想は、ただ単に「売上目標」だけを掲げている企業では思いつかないことです。

ミッション、ビジョン、バリューにおいて、まず重要になるのは、ミッションです。

何のために会社を経営するのか?

という部分です。

ミッションがあれば、共感を生み、顧客、取引先、従業員と強い繋がりを作り、その強い繋がりが繁栄・発展をもたらしてくれるようになります。

というのも、ミッションというのは、利己的なものではなく、利他的なものだからです。

「売上目標」「自社が儲けたい」「上場したい」という利己的な想いでは、人は共感しません。

共感が起きないということは、条件でしか繋がれないような、脆い関係性しか築けないのです

例えば、同じ伝統工芸品を扱っていても、一方の店の伝統工芸品が「儲けるためにやっている」だけの会社なのか、それとも

これまで紡がれてきた、伝統工芸による豊かな日本の暮らしを守りたい

という想いでやっている会社のなのか、どちらを買いたいと思うかということです。

職人の技術が同じであれば、確かに、商品としての完成系では差がつかないかもしれませんが、最終的には、その完成形の背後にある背景によって差が生まれてしまいます。

あくまでも「自社が儲けたい」と思っている会社には、全く商品・サービスが売れないわけではないですが、その会社を応援してくれるようなブランドのファンは付きません。

一方で「日本の工芸を元気にする!」というミッションを背景に商品・サービスを提供していれば、そこにはブランドのファンがつきます。

それは単純に、商品・サービスのものが良いからというだけでなく、中川政七商店を応援したくなるという人がたくさん集まり、それがブランドを支えてくれるというわけです。

これは顧客だけでなく、取引先との関係性でもそうです

付き合ったら「メリットがありそう」「他よりも条件が良い」という利害関係だけで繋がるのか、「日本の工芸を元気にする!」というミッションに共鳴して繋がるのかでは、生まれるものは全然変わってきます。

一社だけで生み出せる価値には限界があるので、コラボレーションというのはこれからの時代はますます重要になってくる訳ですが、利害関係だけで繋がると、お互いが出し惜しみするので、これまでの延長線上のようなものしか生まれません。

一方で、ミッションで繋がることができれば、その壮大な目的に向かって、互いが全力を尽くすので、これまでの市場にはなかった、全く新しいものが創造できたりします。

中川政七商店では、全国に、産業観光地を作るというようなモノを生み出せています。

これは、従業員との関係性においても同様です。

ミッションを掲げていれば、そのミッションに共感した人しか、そもそも会社の従業員になることはありません。

本当に、ミッションに共感している従業員は「給与・福利厚生・休み・労働時間」などの条件以上の働く価値をその会社に見出します。

そういう従業員は、その会社で働くこと自体が喜びであり、働きたくて働きたくて、月曜日が待ち遠しいというような状態であったりとか、四六時中、気づけば仕事のことを考えたりするくらい、没頭します。

一方で、ミッションがなく、売上目標とかしかない企業は、「給与・福利厚生・休み・労働時間」といった条件を提示して、それに魅力を感じて、能力が見合う人材が入社します。

ですが、そういう人材は、条件以上に働く価値を見出していないので、基本的に、省エネで、セーブして働きます。

これ以上頑張っても、そこまで働く条件は良くならない

とわかれば、頑張ることを早々に辞めますし、もっと良い条件を提示してくれる企業が出て来れば、すぐに会社を後にします。

どちらの企業が長期的に繁栄するのかは、目に見えていると思います。

だからこそ、ミッションを定めることが大事ということです。

3.ミッション・ビジョン・バリューを言語化する

ミッションは、経営者が頭の中で思っているだけではダメで、言語化する必要があります。

というのも、言語化しないと、他人と共有することは不可能だからです。

なので、自分が心の底から思うミッションを書き出して、共有するようにしましょう。

ミッションができれば、ビジョンやバリューは簡単です。

ビジョンは、ミッションをより具体化したものだと考えればいいです。。

例えば、中川政七商店では

  • 中川政七商店が日本産地の一番星として輝く
  • 産地の一番星を数多く生み出す
  • 一番星を起点に産地を「さんち」化する

というようなビジョンを掲げています

これがあることで、具体的にそのミッションをどう実現していくのかがクリアになります

そして、バリューとは、そのミッションやビジョンを実現していくための日々の行動指針です。

ビジョンを言われたとしても、日々の仕事の中で、具体的に何を基準に、どう動けば良いのか、がわからないと、ミッションやビジョンは実現できません。

例えば、中川政七商店では、「こころば」や「しごとのものさし」というような行動基準を従業員に示しています

例えば、「こころば」には10項目あるのですが、その1つを紹介すると

自分に対して、お客様に対して、取引先に対して、同僚に対して、社会に対して「正しくあること」誰に対してであれ、自分の中で正しいと思うことは一つであるはずで、それは言ってしまえば、人として正しくあることに他なりません。仕事の場面では往々にして、正しいことはわかっているのに、さまざまな理由をつけてやるべきことをやらなかったり、やるべきでないことをやってしまうことがあります。曲げることに慣れずに、「正しくあること」を大切にして、それに従って行動してください(『日本の工芸を元気にする!』中川政七)

というような感じですね。

こういう指針があるだけでも、組織の従業員のベクトルが一方向に揃うようになります。

このバリューというのは「売上目標」を最大の目的としている会社でも、作られている場合がありますが、大抵の場合は、形骸化しています。

「売上目標」だけを掲げている企業が目指す世界には、従業員は興味を持っていないですし、従う意味も大して感じていません。

せいぜい、それを守らないことによって、自分が得られる条件に弊害が出る場合に従う程度です

あくまでも申し訳程度に付き合うだけで、本当の意味で、従業員のベクトルが揃うことはありません。

従業員は「自分の利益」に興味関心があるだけだからです。

一方で、ミッションに共感していると、そこには筋の通った理屈があるので、「なぜ、このバリューを守らないといけないのか?」が腹の底から理解できるようになります

そして、日々の仕事の中で、そのバリューを守っていくことで、ミッションやビジョンの実現に近づけるという実感とやりがいも持てるようになります。

なので、ぜひ今回の記事を参考に、ミッション、ビジョン、バリューについて一度考えてみてください

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